世界のスマートフォンアプリの分析やデータ収集を行う米国のサービスAppAnnieは、定期的にアプリのダウンロード数を公表している。日本でのランキングも公表しているが、5月のトップ10をみると非ゲームランキングでの日本製品はAndroidアプリのダウンロード数6位にランクインしているLINE(ライン)だけだ。他はフェイスブックのInstgramやグーグル社のGmailなど米国企業が大半を占めている。
2011年6月にiPhone/Andoroidアプリと携帯電話で正式リリースされたLINEは、キャリアを超えてコミュニケーションできるメッセージお届けアプリという位置づけだった。携帯電話からスマホに機種変更したらキャリアメールが使いづらくなったため、急激に増加し始めたスマホユーザ向けに、似たような機能を持つアプリはすでにいくつかリリースされていた。ところが、LINEは予想外の勢いでユーザー数を増やしていった。
LINEは昨年の正式リリース時に「年内100万ユーザー達成を目指します」と控えめな目標をたてていたのが3か月で累計100万ダウンロード、そして6か月で1000万ダウンロードを達成した。2013年4月末で登録ユーザー数は1億5000万人を突破し、現在の日本の人口よりも多くの人が、世界でLINEを利用するまでに成長した。
メッセンジャーアプリなら、2009年にスマホ版がリリースされた無料通話で知られるSkype(スカイプ)にもある機能だ。Facebook(フェイスブック)にもメッセンジャー機能がある。なぜLINEなのか。お風呂に入るときも完全防水できるからと食品保存用のジップロックに入れてスマホを利用している20代女子に聞いてみた。
「だって、カワイくないから。LINEはスタンプを送れるでしょう。メッセージが文字だけとかあり得ない。携帯電話のメールだと、絵文字やデコメは相手が別のキャリアだと違う絵になったり、ちゃんと見えなかった。でもLINEのスタンプは同じように見えるから、ちゃんと伝わっている気がする」
LINEオリジナルのキャラクター、熊のブラウン、ウサギのコニー、丸顔のムーンらの表情豊かなイラストのスタンプが「カワイイ」そうだ。そして、スタンプだけを送っても、そのときの気分が伝えられるのが楽しいという。スタンプや絵文字を使用できるメッセンジャーは他にもあるが、LINEならほとんどの友だちがインストールしているから利用する回数が多くなるそうだ。
先行して多くのユーザーを獲得したLINEに、他のアプリは追いつけない状態だとアプリ開発に進出したゲーム会社社員が言う。
「韓国で強いカカオトークはLINEより半年早くサービスをスタートしましたが、日本では劣勢。LINEに対抗して大量の無料スタンプをリリースしたものの、追いつけない。2012年10月にDeNAが無料通話の音質の良さをセールスポイントにcomm(コム)で参入しましたが、先月、事業縮小が明るみになりました。今年はサイバーエージェントがデコリンクを投入しましたが、会員数は伸び悩み中。日本ではLINEのひとり勝ちですよ」
このままLINEだけが順調に勢力を拡大し続けるのだろうか。とはいえ、ユーザーの気分はどう変わるかわからない。他にも、いくつか気になるサービスはあると前出のゲーム会社社員が言う。
「まず微信(WeChat)ですね。中国のテンセントが2011年1月にサービスを開始して、今やユーザー数は世界で4億人を超えます。ボイスメッセージや動画も送れる。中国語圏では出会い系のイメージが強いらしいですが、それは微妙なコミュニケーションに向いているという証拠(笑)。もうひとつ、いま気になっているのはCocoPPa(ココッパ)です。正確にはメッセンジャーではないですが、若い女性ユーザーの比率がとても高いんですよ」
CocoPPaはネット広告のユナイテッドが昨年7月にiPhone版のみで始めた着せ替えアプリ。ユーザーがアイコンや壁紙を自由に投稿し、それを利用してコメントできるSNS機能も併せ持っている。登録ユーザーの約半数(47%)が米国で、しかも10代女性が多いという。5月末にAndroid版が公開されると、6月には累計ダウンロード数が1000万を超えた。
「1000万ダウンロードは、メジャーアプリになるかどうかの境目。今後、SNS機能も拡充される予定だというし、オリジナル画像をスタンプに出来るようになるのかもしれないですね。LINEが新たなサービスとして画面デザインを変更できる着せ替え機能を始めましたが、ひょとしたら女子に人気のCocoPPAを意識しているのかもしれないですよ」(前出・ゲーム会社社員)
女心をつかんだアプリが、勝ち残るのか。