参議院選挙について連日大きく報道されているが、新聞・テレビにとって国政選挙は大のかき入れ時だ。17日間の参院選の期間中には、政党や候補者の選挙広告やCM、投票を呼びかける選挙公報まで巨額の広告費が税金からつぎ込まれる。
たとえ得票率がゼロでも、投票率が低くても、その費用を返上する必要はない。つまり、結果を出さなくとも、料金の取りっぱぐれはないのだ。だから大メディアはこの機に1円でも多く稼ごうと、記者は“営業マン”になり、選挙報道の内容は国民ではなく、“広告主”である政党の方を向いているのである。次の一文を読んでいただきたい。
〈全国に張り巡らせた取材網を総動員して、今回の参院選報道にあたります。そして、選挙報道を通し日本の政治の質を高める手助けをしたいと考えています。毎日新聞の取り組みにご期待ください〉
これは読者に向けた宣言ではない。毎日新聞が政党と候補者に配った参院選広告営業資料「2013 選挙の毎日」に掲載された政治部長の挨拶文だ。
資料では「多彩な論客人」としてテレビのコメンテーターで活躍する岸井成格・特別編集委員や岩見隆夫・特別顧問などが写真付きで紹介され、「テレビを通じても有権者に影響力がある」ことを宣伝している。
他紙も負けてはいない。朝日は政党向け営業資料で読者が「選挙戦の焦点となる政策課題への関心が高い」ことを訴え、読売の資料は読者の「7割以上が必ず投票」と投票率の高さを謳っている。紙面では「低投票率」を煽る(たとえば読売新聞朝刊は7月4日の公示日に<低投票率予想の声「無党派頼み」民・維に危機感>の記事を掲載)一方で、広告パンフレットには「うちの読者なら7割以上が投票」と広告効果が高いことをアピールしているのだ。
※週刊ポスト2013年8月2日号