オフに引退表明し、5月5日には国民栄誉賞を受賞した松井秀喜(39)がヤンキースに“電撃復帰”する。選手としてではない。
7月28日にヤンキースタジアムで行なわれる引退式典のために「1日限り」の契約を交わし、背番号55番のピンストライプを着て「ヤ軍の一員」として花道を飾るためだ。
「選手をこうした形で称えるのは、極めて稀なケース。永久欠番の次に名誉な処遇です。それほどヒデキの球団への貢献度が高く、ニューヨークのファンにも愛されたということです」(ニューヨークの地元記者)
ヤ軍広報部はセレモニーの内容を明かしていないが、「松井のスピーチ、そしてピンストライプを着ての始球式をやるだろう」という。
その始球式に、イチロー(39)が「捕手」として登場するのか。球団は「ノーコメント」だったが、“本命”は、松井と親しい同年齢のジーター主将のようだ。ヤ軍番記者がいう。
「球団関係者や番記者たちは、松井とイチローが決して友好な関係ではないことを知っているから、イチローに“松井の引き立て役”を頼むわけにはいかないという配慮が働くだろうし、イチローが拒否するかもしれない。イチローが絡むとしたら、球団やファンの受けを狙ったイチロー本人が申し出た時だけだろう」
松井より2年早くMLBに移籍したイチローの成績は、昨季までの在籍12年で2606安打、660打点。10年連続200安打のほか、首位打者2回、最多安打7回を獲得し、最大の栄誉といわれる野球殿堂入りも確実視されている。
だが、そんな天才打者でさえも、常勝軍団のヤ軍の基準では「松井より格下」なのだ。あるベテランコラムニストは、「そもそも松井の引退式典にイチローが出席できるかどうかもわからない」とまで語る。
「ヤ軍は故障者続出で自慢の長打力が鳴りを潜めている。7月末のトレード期限までキャッシュマンGMは長距離砲獲得を目指すだろう。イチローは外野の全ポジションを守り、どんな打順でもこなしており、使い勝手のいい選手として評価されているが、いい話がくればトレード要員となる。ヤ軍は戦力アップのためには何でもやる。今年のイチローは、まだまだやれるところを見せているから売り頃といえる」
39歳のイチロー獲得に動く球団はあるのか。機動力重視のチームなら十分に力を発揮できるという声は少なくない。
「昨年のワールドチャンピオンのジャイアンツは外野手に故障者が出て、内野手の田中賢介をマイナーから昇格させて外野で使っている。イチロー獲得に動く可能性はある」(同前)
ユニフォームを脱いでも“チームの英雄”とされる松井。一方で、前人未到の記録を打ち立てながら“使い勝手のいい駒”とみなされるイチロー。7月28日のセレモニーは、対照的な2人が邂逅する最後の場面となる。その日、2人はどんな“絡み”を見せるのか──。
※週刊ポスト2013年8月2日号