投手、野手の「二刀流」で話題となっている日本ハム・大谷翔平だが、二刀流の成功条件とは何だろうか。せっかくやるのだから、中途半端な成績で終わるのは面白くない。投打において「規定数」(*注)は達成したいところだ。投手として歴代4位となる25本塁打を放った“強打の投手”平松政次氏はこう語る。
「確かに我々の時代は中1日休んで、リリーフで投げたりしていたけど、今思うと無謀だね(笑い)。最低、中3日は休ませないと壊れちゃうよ」
となれば、次のような起用方法はどうか。
【1】中6日のローテで日曜に先発。3日休養した後、野手として出場
一般的な先発投手は、登板の翌日は完全休養にあて、2日目は軽いキャッチボール程度、3日目に投げ込みをやり、4日目にブルペン入り。5、6日目はランニングなどで調整して次の登板に備えるというのが基本。そのため、大谷の登板日を日曜に設定、移動日になることが多い月曜を3日の休養に入れ込んで、野手起用するというものだ。
ポイントは、あくまで投手にウエイトを置いて考えること。
「先発すると体全体の筋肉が張るので、無理をすると故障にがる。あくまで投手中心の調整として野手で試合に出て、次のローテーションに備える。これがベストじゃないかな」(平松氏)
代打で2本、投手として36本塁打を記録した“強打の400勝投手”、金田正一氏も頷く。
「ワシはあくまで投手として打席に入っていた。打撃練習にしてもピッチングのため、足腰を鍛えるためにやった。打者主体で練習しても投手として必要な筋肉は鍛えられないが、その逆ならカバーできるからね」
残り半分の日程となった今シーズンからでも遅くはない。うまくすれば二桁勝利も達成できるし、開幕時からなら15勝にも手が届く。
打の方でも、規定打席にギリギリ到達、物理的には3割・30本も可能だ。規定打席数到達が難しくなった場合には、休養日に代打で出場させ、打席数を稼ぐこともできる。現に先日、代打でホームランを打ったことからも、代打屋としてのポテンシャルに心配はない。
あくまでも「打者としての成功」を優先するというのなら、次の方法もある。
【2】普段は野手として出場し、中10日の登板日ではDH制を放棄する
これならば、無理なく登板機会に合わせて調整しながらも、打者としての練習も疎かにならない。休養としてスタメンを外し、投げ込みをさせるなど、自由度が高く日程が組めるため、肝心の登板日に万全を期することができる。
もともと大谷の打撃能力については評価が高い。あるOBは、「リストを柔らかく使い、内角球に対し腕をたたんで打つ技術もあるから、率を残せる」と、その非凡な能力を賞賛していた。
ただ、大谷を先発・二刀流で起用する場合、日本ハムはDHを放棄する必要がある。パ・リーグの規則では、DHは必ず起用しなくてはならないわけではなく、戦術に応じて、セ・リーグのように投手を含めた9人で戦うこともできるから、ルール上は問題ない。
だがその場合、試合途中からDHを置くことはできなくなる。そのため、大谷が降板した後の投手が打席に立ったり、何より本来、DH専門で獲得したアブレイユ(打率・288、20本塁打)のような選手を効果的に使えなくなるリスクを負うことになる。
栗山監督は「大谷を投打で先発させるため、DHを外す準備もしている」と前向き発言をしている。ファンの期待を考えれば、自ずと答えは決まってくるだろう。
【*注】「規定投球回数」=試合数(144)×1.0、「規定打席」=試合数(144)×3.1
※週刊ポスト2013年8月2日号