ビジネス

マイホームで老後資金を リバースモーゲージ、借上げ制度

「子供はすでに独立して家を去り、妻も亡くした。広い一軒家に1人。バリアフリーではないので段差につまずくことも多く、ひょっとして急病で倒れて動けない時、誰も見つけてくれないかもしれないという恐怖心もある─。都心近郊には、そんな独居老人が住む一軒家が増えている。そうした中古物件が市場に出るパターンは非常に多い」(東京の不動産会社役員)

 高齢化社会においては、医療や介護が充実した高齢者専用の住居の進歩が目覚ましい。子供が独立し、広い家が必要なくなった場合、それを売却して高齢者住宅や老人ホームに入るパターンは多い。

 だが、貯金はそれほどないものの、家に住みながらヘルパーなどの介護を得て暮らしていきたいという人もいるだろう。

 そういう人にピッタリなのが、マイホームでお金を借りる「リバースモーゲージ」。高齢者がマイホームを担保にして公的機関や銀行から資金を借り入れ、死亡など契約が終了した時点でマイホームを処分して一括返済する制度だ。

 建物は評価されず、土地だけを担保にするため、土地付き一戸建て住宅が対象。マンションや定期借地権付き住宅は対象外だ(一部、マンションも対象としている銀行もある)。融資額は申し込み時の土地評価額の6~9割程度で、1~3年ごとに土地の再評価と融資額の見直しが行なわれる。 個人向け不動産コンサルティング会社「さくら事務所」の長嶋修・会長が話す。

「長年住み慣れたマイホームに住みながら老後資金を得られるのがメリットです。ただし、この制度では長寿がリスクになる。長生きして借入金が借入限度額を超えると融資が止まることがあるので注意が必要です」

 リバースモーゲージは民間金融機関だけでなく、地域の社会福祉協議会や地方自治体が行なう有利な条件のものもあるので、まずはそちらを検討したい。

 自宅を売らずに定期的な収入を確保する道もある。一般社団法人移住・住みかえ支援機構(JTI)が運営する「マイホーム借上げ制度」の活用だ。JTIがマイホームを終身にわたって借り上げて転貸し、利用者に安定した賃料収入を保証するという制度。50歳以上であれば利用でき、一戸建ても集合住宅もいずれも対象になる。

 あらかじめ5年や10年など指定した期間だけ貸す契約も可能で、今は子供が遠方に住んでいるが、リタイア後には実家に戻ってくる、といった場合に使い勝手がいい。契約期間中に空き家になってしまったとしても、JTIが利用者に最低保証賃料を支払ってくれる。

「マイホームの債務が完済されていること、固定資産税などの支払いが滞っていないことなど、制度利用には条件があることを知っておきましょう」(長嶋氏)

 もちろん、「マイホーム借上げ制度」が利用できなくても、普通の賃貸物件として貸すことで老後資金をつくることも可能だ。価値あるマイホームさえ選べれば、老後の心配さえ不要なのである。

※週刊ポスト2013年7月19・26日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

女優の広末涼子容疑者(44)が現行犯逮捕された
「『キャー!!』って尋常じゃない声が断続的に続いて…」事故直前、サービスエリアに響いた謎の奇声 “不思議な行動”が次々と発覚、薬物検査も実施へ 【広末涼子逮捕】
NEWSポストセブン
再再婚が噂される鳥羽氏(右)
《芸能活動自粛の広末涼子》鳥羽周作シェフが水面下で進めていた「新たな生活」 1月に運営会社の代表取締役に復帰も…事故に無言つらぬく現在
NEWSポストセブン
「居酒屋で女将をしている。来てください」と明かした尾野真千子
居酒屋勤務を告白の尾野真千子、「女優」と「女将」の“二足のわらじ” 実際に店を訪れた人が語る“働きぶり”、常連客とお酒を飲むことも
週刊ポスト
運転中の広末涼子容疑者(2023年12月撮影)
《広末涼子の男性同乗者》事故を起こしたジープは“自称マネージャー”のクルマだった「独立直後から彼女を支える関係」
NEWSポストセブン
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された
《病院の中をウロウロ…挙動不審》広末涼子容疑者、逮捕前に「薬コンプリート!」「あーー逃げたい」など体調不良を吐露していた苦悩…看護師の左足を蹴る
NEWSポストセブン
北極域研究船の命名・進水式に出席した愛子さま(時事通信フォト)
「本番前のリハーサルで斧を手にして“重いですね”」愛子さまご公務の入念な下準備と器用な手さばき
NEWSポストセブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《中山美穂さん死後4カ月》辻仁成が元妻の誕生日に投稿していた「38文字」の想い…最後の“ワイルド恋人”が今も背負う「彼女の名前」
NEWSポストセブン
山口組分裂抗争が終結に向けて大きく動いた。写真は「山口組新報」最新号に掲載された司忍組長
「うっすら笑みを浮かべる司忍組長」山口組分裂抗争“終結宣言”の前に…六代目山口組が機関紙「創立110周年」をお祝いで大幅リニューアル「歴代組長をカラー写真に」「金ピカ装丁」の“狙い”
NEWSポストセブン
中居正広氏と報告書に記載のあったホテルの「間取り」
中居正広氏と「タレントU」が女性アナらと4人で過ごした“38万円スイートルーム”は「男女2人きりになりやすいチョイス」
NEWSポストセブン
広末涼子容疑者(写真は2023年12月)と事故現場
《広末涼子が逮捕》「グシャグシャの黒いジープが…」トラック追突事故の目撃者が証言した「緊迫の事故現場」、事故直後の不審な動き“立ったり座ったりはみ出しそうになったり”
NEWSポストセブン
Tarou「中学校行かない宣言」に関する親の思いとは(本人Xより)
《小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」》両親が明かす“子育ての方針”「配信やゲームで得られる失敗経験が重要」稼いだお金は「個人会社で運営」
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《妊娠中の真美子さんがスイートルーム室内で観戦》大谷翔平、特別な日に「奇跡のサヨナラHR」で感情爆発 妻のために用意していた「特別契約」の内容
NEWSポストセブン