現在の日本の選挙制度では、いつまで経っても「若者のための政治」は実現しない。少子高齢化が進み若年層の人口が減っている上に、高齢者の投票率が圧倒的に高い。総務省の抽出調査をもとに計算すると前回の総選挙における投票者の約45%は60代以上。20代の若者はわずか8%程度に過ぎない。
候補者は高齢者の支持さえ得られれば当選圏に入ることができるのだ。だから高齢者が嫌がる政策を避け、その分の負担は声をあげない若者に押し付ける。
典型は年金をめぐる問題だ。現役世代の保険料負担で高齢者の年金給付を賄っているのだから、支える側が少なくなれば給付を削減するか現役世代の負担を上げるしかない。
給付カットは高齢有権者の反発を買うので、現役世代の負担増や将来の受給開始年齢の引き上げばかりが先に進められる。「痛みは若い世代ほど多く」というわけだ。
内閣府の試算では、今年生まれた子供は厚生年金で2490万円の「払い損」になるとされる。医療や介護も同様だ。
このような世代間の不公平により若者は将来に不安を感じて消費を控え、それがデフレを加速させてきた。少子化が止まらない原因の一つもそこにある。若い世代の政治不信は極限に達していると言っていい。
若者に投票を呼びかけることはもちろん必要だが、「シルバーデモクラシー」を打破するには選挙制度の抜本改革が必要だと私は考える。
■文/井堀利宏(東京大学大学院教授)
※SAPIO2013年8月号