アンジェリーナ・ジョリーが予防のため乳房切除を行ったのが、遺伝性乳がん(正式名称・遺伝性乳がん・卵巣がん症候群、HBOC)。アンジーのニュース後は、検査を実施している医療機関に問い合わせが殺到したという。どういった検査なのか、どんな人が受けられるのかを解説しよう。
アンジーの母親は10年間乳がんと闘い、56才で卵巣がんで他界した。アンジーは「遺伝子検査」を受け、乳がんや卵巣がんの発症と関連する遺伝子(BRCA1、BRCA2)の変異により、乳がんや卵巣がんを発症するリスクが高いことがわかった。彼女自身はまだがんを発症していなかったが、乳房を予防的に切除したことを発表、世界中で注目を集め、話題となった。
日本でHBOC検査と医療システム作りを目指している、昭和大学医学部・乳腺外科准教授の明石定子さんは遺伝性乳がん検査について、次のように解説する。
「この検査のメリットは、遺伝情報を正しく知ることで、HBOCの発症リスクに備えられること。選択肢には、ホルモン療法やこまめに乳がん検診を受けての早期発見があります。アンジーが選択した予防的乳房切除を、日本で実際に受けたかたはまだほとんどいません。病気ではない体にメスを入れるわけですから、病院側でも倫理審査委員会の承認や心のケアなど、受け入れ体制を整える必要があるのです」(明石さん)
HBOC検査は、わずか7ccの採血だけで行われる。だが、安易に受けていい検査ではない。受けられる人は遺伝リスクが高い人に限られる。そのため、検査前に遺伝カウンセラーのカウンセリングを受け、検査の意味を理解することが非常に重要となる。
「遺伝性乳がんであることやそのリスクを知りたくないというかたもいます。また、遺伝性ですから家族や親戚にもかかわる問題になります。例えば自分が陽性の場合、親や子供に同じ遺伝子変異がある確率は50%。乳がんや卵巣がんになるリスクが高いとわかれば、あってはならないことですが、家族の雇用や結婚の障害になる可能性も否定できません。そうしたデメリットもあることを理解した上で、検査を受けるかどうかを決めていただきたいのです」(明石さん)
※女性セブン2013年8月1日号