7月7日よりTBS系でスタートした日曜劇場『半沢直樹』(毎週日曜午後9時~)が初回19.4%、第2話21.8%の高視聴率を記録し話題になっている。銀行というお堅い組織を舞台にしたこのドラマが、なぜ注目を集めているのだろうか。
近年の大ヒットドラマといえば、家政婦が崩壊寸前の家族を再生させる『家政婦のミタ』(日本テレビ系)や、変人物理学者が難事件を解決に導く『ガリレオ』(フジテレビ系)など、設定の面白さ、特異さで見せるドラマが多かった。
対する『半沢直樹』は、メガバンクという巨大企業に生きるバブル入社組の融資課長・半沢直樹(堺雅人)の奮闘を描いた企業ドラマ。本作の人気の理由について、テレビドラマ通のライター・吉田潮さんはこう語る。
「企業ドラマというとどうしても難しい内容になりがちなんですが、『半沢直樹』は登場人物も伏線も何もかもわかりやすく描かれています。例えば敵役には、東田社長役の宇梶剛士や板橋社長役の岡田浩暉など、出てきた途端に、『あぁ、こいつも悪い奴だ』ってすぐわかるような俳優を起用しています」
敵と味方をわかりやすく示すことで、『水戸黄門』のように万人ウケする勧善懲悪の構図を描いている。しかも展開がスピーディで、視聴者を飽きさせないよう工夫されている。
「第1話の半沢と東田社長の対決シーンや、第2話で国税の先回りをしようと半沢が行内の保管庫へ走る場面など、アクションシーンも取り入れられて緩急がついている。半沢が啖呵を切るシーンも、長ったらしくなく説教臭くないところがいい。展開のテンポのよさは、見ていて心地いいものがありますね」(吉田さん)
また、元銀行員の直木賞作家、池井戸潤氏の原作(『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』ともに文春文庫)とあって、銀行組織内部の描写にも注目が集まっている。半沢と同じく、メガバンクに勤める現役行員のA氏が語る。
「私たちにとっても『あるある』と思える要素が多分にちりばめられています。銀行に対する国税のいやらしい感じなんかは銀行員なら誰しも経験したことがあるはず。合併によって生じた出身行ごとの派閥争いも、今ではそれほど激しくなくなったとはいえ、見事に描き出しています」
※週刊ポスト2013年8月2日号