ライフ

芥川龍之介らが眠る霊園巡り “墓マイラー”が推奨ルート紹介

 都内には政治家、小説家、芸術家など偉人や著名人が眠る墓があちこちにある。それらを巡り、故人の足跡に思いをはせる「墓マイラー」(※墓に参る者の意)が増えている。墓マイラーのあきやまみみこ氏がお薦めのお参りコースを紹介する。

 * * *
 ひとつめは都内四大霊園のうちの2つ、雑司ヶ谷霊園(豊島区)と染井霊園(同)を巡るコースだ。東京メトロ副都心線雑司が谷駅で下車。霊園管理所でマップ(ネットでも公開)をもらう。メインストリートに面した漱石の墓は大きな安楽椅子の形をした堂々たる佇まいで、漱石と鏡子夫人の戒名が刻まれている。美人画の竹久夢二の墓もすぐ近く。東に進むと、中浜(ジョン)万次郎と洋画家・東郷青児の墓が隣り合っている。

 霊園の北部エリアには、〈ふたりでみるとすべてのものは美しく見える〉と彫られた詩人サトウハチローや、〈見上げてごらん夜の星を〉と刻まれた作曲家いずみたくの墓碑。さらには泉鏡花や自然石が見事な小泉八雲、東條英機、永井荷風の墓がある。荷風は日記『断腸亭日乗』に「墓石建立亦無用なり」と書いていたはずだが。

 染井霊園へは都電荒川線雑司ヶ谷停留所から三ノ輪行きに乗って新庚申塚停留所で下車。霊園手前の本妙寺には剣豪千葉周作や名奉行遠山金四郎の墓がある。近くの慈眼寺には生前激しい論争を繰りひろげた谷崎潤一郎と芥川龍之介が眠る。谷崎の墓が芥川に背を向けているのがおかしい。芥川の墓はほぼ正立方体で、愛用の座布団と同じサイズだとか。

 ほかにも染井霊園には幣原喜重郎や若槻礼次郎ら元首相や、言文一致体の小説を初めて書いた二葉亭四迷、詩人で彫刻家の高村光太郎と妻の智恵子、岡倉天心などそうそうたる人たちが眠る。

 もうひとつのお薦めは四大霊園の残りの谷中霊園(台東区)と青山霊園(港区)を辿るルートだ。JR日暮里駅で下車し、谷中霊園の階段を昇ると、鬱蒼とした桜並木がお出迎え。

 大通り沿いの初代三遊亭円遊、俳優長谷川一夫にお参りしたら、霊園管理事務所でマップをもらい、徳川幕府最後の将軍、徳川慶喜の墓を訪ねる。鉄柵に囲まれているため、間近で見られないのが残念だ。霊園内には渋沢栄一、横山大観、鳩山一郎元首相、毒婦といわれた高橋お伝など、有名人の墓がそこここにある。

 霊園を出て三崎坂方向に向かい、名奉行大岡越前守が眠る瑞輪寺や戯作者仮名垣魯文の墓のある永久寺を覗いて、東京メトロ千駄木駅から千代田線で青山霊園へ。乃木坂駅で降りると目の前が青山霊園だ。

 大通りの交差点にはショートショートの星新一、その左奥には、『武蔵野』の国木田独歩や司馬遼太郎の『坂の上の雲』に登場する秋山好古の墓がある。大通りの交差点を北に約400m進むと、鳥居が目印の明治の元勲・大久保利通の墓。高さ5m、中国の神獣贔屓の上に墓碑が乗る。近くには小説の神様志賀直哉、歌人斎藤茂吉と精神科医・茂太親子が眠っている。

 周囲には上野英三郎の墓と忠犬ハチ公碑があり、紅葉が彫られた洒落た花受けがあるのは『金色夜叉』の尾崎紅葉。さらに犬養毅元首相、乃木希典、中江兆民などの有名人の墓が集まっている。

 静謐でゆったりと時間が流れる霊園や墓地は都会のオアシスだ。マナーを守り、安らかな気持ちでお参り&お散歩をしたい。

※SAPIO2013年8月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

精力的な音楽活動を続けているASKA(時事通信フォト)
ASKAが10年ぶりにNHK「世界的音楽番組」に出演決定 局内では“慎重論”も、制作は「紅白目玉」としてオファー
NEWSポストセブン
2022年、公安部時代の増田美希子氏。(共同)
「警察庁で目を惹く華やかな “えんじ色ワンピ”で執務」増田美希子警視長(47)の知人らが証言する“本当の評判”と“高校時代ハイスペの萌芽”《福井県警本部長に内定》
NEWSポストセブン
ショーンK氏
《信頼関係があったメディアにも全部手のひらを返されて》ショーンKとの一問一答「もっとメディアに出たいと思ったことは一度もない」「僕はサンドバック状態ですから」
NEWSポストセブン
悠仁さまが大学内で撮影された写真や動画が“中国版インスタ”に多数投稿されている事態に(撮影/JMPA)
筑波大学に進学された悠仁さま、構内で撮影された写真や動画が“中国版インスタ”に多数投稿「皇室制度の根幹を揺るがす事態に発展しかねない」の指摘も
女性セブン
奈良公園と観光客が戯れる様子を投稿したショート動画が物議に(TikTokより、現在は削除ずみ)
《シカに目がいかない》奈良公園で女性観光客がしゃがむ姿などをアップ…投稿内容に物議「露出系とは違う」「無断公開では」
NEWSポストセブン
ショーンK氏が千葉県君津市で講演会を開くという(かずさFM公式サイトより)
《ショーンKの現在を直撃》フード付きパーカー姿で向かった雑居ビルには「日焼けサロン」「占い」…本人は「私は愛する人間たちと幸せに生きているだけなんです」
NEWSポストセブン
気になる「継投策」(時事通信フォト)
阪神・藤川球児監督に浮上した“継投ベタ”問題 「守護神出身ゆえの焦り」「“炎の10連投”の成功体験」の弊害を指摘するOBも
週刊ポスト
長女が誕生した大谷と真美子さん(アフロ)
《大谷翔平に長女が誕生》真美子さん「出産目前」に1人で訪れた場所 「ゆったり服」で大谷の白ポルシェに乗って
NEWSポストセブン
九谷焼の窯元「錦山窯」を訪ねられた佳子さま(2025年4月、石川県・小松市。撮影/JMPA)
佳子さまが被災地訪問で見せられた“紀子さま風スーツ”の着こなし 「襟なし×スカート」の淡色セットアップ 
NEWSポストセブン
第一子出産に向け準備を進める真美子さん
【ベビー誕生の大谷翔平・真美子さんに大きな試練】出産後のドジャースは遠征だらけ「真美子さんが孤独を感じ、すれ違いになる懸念」指摘する声
女性セブン
『続・続・最後から二番目の恋』でW主演を務める中井貴一と小泉今日子
なぜ11年ぶり続編『続・続・最後から二番目の恋』は好発進できたのか 小泉今日子と中井貴一、月9ドラマ30年ぶりW主演の“因縁と信頼” 
NEWSポストセブン
同僚に薬物を持ったとして元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告が逮捕された(時事通信フォト/HPより(現在は削除済み)
同僚アナに薬を盛った沖縄の大坪彩織元アナ(24)の“執念深い犯行” 地元メディア関係者が「“ちむひじるぅ(冷たい)”なん じゃないか」と呟いたワケ《傷害罪で起訴》
NEWSポストセブン