参議院選挙での大勝で自民党による公共事業回帰が鮮明になっている。選挙直前に急浮上したのが〈安倍―石破新幹線〉構想だ。
さる6月5日、東京に山陰地方の50市町村の市長、町長らが集まり、「山陰縦貫・超高速鉄道整備推進市町村会議」が設立された。これは北陸新幹線が延びる福井から石破茂・自民党幹事長の地元・鳥取を通って安倍晋三首相の地元・下関まで山陰を縦貫する“新・新幹線”を走らせようという巨大プロジェクトだ。経済効果に乏しく巨大な赤字を生むことは見えているが、なんと「リニア新幹線を誘致しよう」という声まで上がっている。
石破幹事長は自民党の国土強靱化計画について、「何のためにやるのか説明できないバラ撒きはしない」と語っていたが、自民党鳥取県連の地域公約には、早速、「日本海側を繋ぐ高速鉄道の実現」が盛り込まれた。推進会議会長の竹内功・鳥取市長は元建設官僚で「石破の父・石破二朗(元建設官僚、鳥取知事)の活躍を聞いて育った」という石破派市長として知られる。
鳥取市の都市整備部に「採算のめどがない無駄な公共事業ではないか」とぶつけた。
「昭和48年の全国新幹線基本計画で、山陰新幹線は大阪を起点に下関まで、鳥取市と松江市の近郊をルートとすると定められた。計画は休眠状態だが、今回、具体化に向けて取り組むことにした」
と、やる気満々であるが、なぜ40年間も休眠状態になっているのかは説明しない。
アベノミクスの13兆補正予算では国土強靱化計画の“生みの親”である二階俊博・自民党総務会長代行の地元・和歌山に道路予算が大盤振る舞いされたが、山口や鳥取はさほど恩恵を受けていない。それというのも、「公共事業は事前の計画がないとすぐに予算をつけることはできない。二階さんは時間をかけて井戸を掘ってきたから、補正予算をとることができた」(国交省官僚)からだ。
それを見た石破氏や安倍首相の地元では、10年間で200兆円の国土強靱化予算バラ撒きに乗り遅れるなとばかりに、「オレの地元にもカネを」という予算をつける材料の仕込みにかかっているのである。
※週刊ポスト2013年8月2日号