うちの子は働く意思があるから「ひきこもり」とは違う──そう考える親は多いだろう。
しかし、働こうとする子供を手助けしたばかりに、より子供が親への依存を強めてしまうケースがある。
Aさん(72)の息子(45)はいわゆる起業家ではあるが、成功したためしが一度もない。深い知識があるわけでもないのに、パンケーキが持て囃されていればケーキ屋を、輸入雑貨の店が流行るとそれを真似た店を出したいと、Aさんの貯金を頼ってくる。
事業を始めるのには最低でも100万円は必要。Aさんはこれまで800万円近く工面してきたという。
「一発当てるなんて考えずに就職して結婚して普通の暮らしをしてほしい」というAさんの嘆きを息子は右から左へ聞き流している。
岡山県に住むBさん(70)の息子(42)は、東京で大手企業に勤めていたが、今から4年前に病気を患い退職、実家に戻ってきた。
Bさんと共に農作業をしてリフレッシュしていく中で息子は、「本気で農業をしたい」と言い出した。Bさんは彼のヤル気を買い、高価な農機をリースするなど支援した。
息子は農業関係の本を大量に買い、片っぱしから読んでいたが、農業は自然が相手。座学だけでは商売にならなかった。最近は「うちの畑の土壌が悪い。土を入れ替える資金をくれ」と次なるカネの無心が始まり、Bさんは頭を抱える。
彼らが実家で暮らす理由は“カネに困ったら親が何とかしてくれる”という意識があるからだ。それは彼らだけの責任ともいいがたい。親としては耳が痛い話だが、問題は親の側にもあるのだ。
『パラサイト・シングルの時代』の著者で中央大学文学部の山田昌弘教授がいう。
「子供の甘えといった単純な話ではない。“自分の老後や将来は子供が面倒を見てくれる”といった親の期待が、ひきこもりを作っているケースもある」
※週刊ポスト2013年8月2日号