“お金のお医者さん”として知られる「家計の見直し相談センター」の藤川太氏がお金に関する固定観念を解きほぐす『マネーポスト』連載「お金持ちの方程式」。ここでは、貯蓄率を高めて浮かせた資金をいかに殖やしていくか、という運用のポイントについて同氏が解説する。
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運用と聞くと、ここ最近の「株高」や「円安」に沸く「アベノミクス相場」が真っ先に頭に浮かび、「ではいったいどの株を買えばいいんだ?」とか「円安はどこまで進むのか?」などと前のめりになる方も少なくないでしょう。
しかし、残念ながら、いまになってムードに踊らされているような人は、実はあまり運用が得意とはいえません。本当のお金持ちのなかには、アベノミクス相場が騒がれている現段階で、すでに手仕舞い始めている人も少なくないのです。
振り返れば、2006~2007年にかけての不動産ミニバブルの時期がそうでした。お金持ちは、それより前の2002~2003年頃、不良債権処理で銀行が四苦八苦するなど、世の中が悲鳴を上げている時に不動産を買い集めていました。そして2006年以降、バブルにさしかかると、市場に新規参入してくる人たちを横目に、売り手市場で利益を確定させたのです。これは株式投資でも同様といえます。
あるお金持ちが「景気のいい時は貯めなさい。景気の悪い時は使いなさい」といっていました。これこそまさにお金持ちの行動パターンといえます。誰もが不安な状況のなかで他人より先んじて動く。それがさらに資産を殖やすことにつながっているのです。
株式市場をみると、昨年11月中旬以降のアベノミクス相場で株価を3~4倍にまで膨らませた銘柄もゴロゴロあります。とはいえ、それらの銘柄すべてが、今後もさらなる大幅上昇が望めるわけではないでしょう。
もちろん、相場は、いつまでも一直線に株価が急騰するわけもなく、これから何回も上がったり下がったりという値動きを繰り返しながら進んでいきます。
不動産をみても、地価の上昇はこれから本格化すると見る人も少なくありません。しかし、実際にはすでに相当回転していて、買い手が選び放題だったのはせいぜい今年1月まで。いまや「売ってください」といってもなかなか思うような物件が出回らないような、売り手市場に移行しつつあります。
このように相場が大きく変動するなかで、まず肝に銘じておくべきことは、みんなが浮かれている時ほどリスクが高いということです。そうである以上、「さすがに高いから、ここはやめておこう」といった見送る勇気も、時には必要ではないでしょうか。私はそう思っています。
だからといって、今後、株価も地価も上がらないなどというつもりは毛頭ありません。おそらく株やFX(外国為替証拠金取引)で短期勝負に打って出ても、それなりの利益は望めるでしょう。ただ、それではいかにも忙しい投資になってしまう。そう考えていくと、ここからさらに大きな利益を狙える投資手法は、どうしても限られてくるのではないでしょうか。
(連載「お金持ちの方程式」より抜粋)
※マネーポスト2013年夏号