60代半ば、人生の折り返し地点を過ぎ、これからどう山を降りていけばいいのか──死をうけとめる練習帳として綴られた『大・大往生』が話題の鎌田實・諏訪中央病院名誉院長と、人生の午後の楽しみ方を指南した新著『西の窓辺へお行きなさい―「折り返す」という技術』の武田鉄矢氏が語り合った。
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武田:先生の本に幾人も登場する、鮮やかに人生を降りた人たちの静けさみたいなのっていうのは、世の中にはやっぱり偉いじいさんとばあさんがいますね。
鎌田:そうなんです。90歳に近いおばあちゃんが、もう限りがあるっていうのに、リハビリテーションを一生懸命するんです。無理しなくていいよと声をかけると、「どうしても梅干しを漬ける時期だ」と。自分が死んだあと、私を思い出してもらって、子供や孫たちに食べてもらいたい、今日より明日、ちょっとでもよくなってうちへ帰り、子供たちに何か残してあげたいと。
武田:本当にいい話ですな。つくづく思ったんですが、やっぱり人間っていうのは、自分のためだけに生きるっていうのはつまらないんですね、きっと。
鎌田:何かしてあげることの喜びを、人間って感じるんですよね。
武田:最近、ひとつだけ思っているのは、機嫌のいいじいさんになりたいということですね。やっぱり、不機嫌なじいさんとか、苛立つばあさんというのは、社会の迷惑ですよ。
鎌田:武田さんと鎌田は、そういうじいさんになれそうな気がしますね。
武田:頑張ってなりましょう! 機嫌のいいじいさん、よく笑うばあさんは国の宝ですよ。いいじいさんになろうと思って僕が考えてるのはゴミ拾いなんです。犬のウンチでも何でもね。ああいうゴミを拾うところから人間の顔立ちって、すっと変わっていくような気がして。先生、一緒にやりませんか?
鎌田:やりましょう!
※週刊ポスト2013年8月2日号