中国内モンゴル自治区の王素毅・党統一戦線部長とその妻が汚職の疑いで当局に身柄を拘束され、取り調べを受けていると発表されたが、これは習近平・国家主席の後継候補として最有力視されている胡春華・広東省党委書記の追い落としを狙ったものとの見方が浮上している。胡氏は昨年11月まで同自治区トップの党委書記で、王氏は胡氏が抜擢した側近中の側近だったからだ。中国情報専門のニュースサイト「博訊( ボシュン)」が報じた。
王氏の身柄拘束が国営新華社通信によって発表されたのは6月30日で、その3日前の27日、王氏は党中央統一戦線部の幹部と会見していることが報道されており、王氏が関係した犯罪案件の捜査は急速に進んでいたことが分かる。
報道によると、王氏の嫌疑は「厳重な規律違反」で、王氏の家族とも連絡がとれない状態で、王氏の妻もともに連行されたとみられている。中国では党幹部が「重大な規律違反」で身柄を拘束される場合、そのほとんどが腐敗事件に絡んでいることが多い。
折しも、習主席は「ハエだろうが、虎だろうが、役職に関係なく引っ捕らえる」との号令の下、全国で腐敗事件の摘発が進められており、王氏も摘発の網に引っ掛かったとみられる。同自治区では大規模な不動産開発が行われており、王氏は業者に便宜を図り、その見返りに多額の賄賂を受け取っていたと博訊は伝えている。
さらに、王氏は胡氏の子飼いの腹心だったことから、その摘発が政治的な意図を持って行なわれたとの観測が広がっている。
胡氏は習主席が政治基盤とする太子党(高級幹部子弟)グループや上海閥と対立する中国共産主義青年団(共青団)閥の有力幹部で、習主席が引退する10年後には、最高指導者の座に就く可能性が最も高いとみられている。
このため、習主席は王氏を取り調べて、胡氏も腐敗に絡んでいたなどとの不利な材料を引き出して、胡氏に政治的な打撃を与えて、共青団閥の弱体化を図ろうとしているとの見方だ。
事件がどのような経緯をたどるかは今後の捜査を見守るしかないが、胡氏が王氏の事件に絡んでいたことが分かれば、政治的な致命傷になりかねない。それだけに、ネット上では「早くも胡春華の追い落としが始まった」との書き込みが見られ、胡氏自身も現在、気が気ではないに違いない。