橋下徹大阪市長の米軍への「風俗活用」提案で注目を集めた性風俗産業。その是非については議論があるだろうが、少なくとも現代ではそこで働く女性の大半は自らの意思でその仕事を選んでいる。なぜそうしたのか。どのような人生を送っているのか。50万人とも言われる性風俗産業に従事する女性たちの生態、素顔に迫った。ここでは19歳の桜さんのケースを紹介する。
関東某県のホテル型ヘルスで働く桜さんは、美しい黒髪が印象的な女性だ。清楚な外見ながら、話し方はやはり今どきの19歳である。
「今のお店は1か月ほど前に入店したんですよ。前は歯科助手してました。辞めた理由は、院長がキモかったから。風俗に入った理由? ん~、私の性格に合ってると思ったから。お給料もイイし!」
しばらく彼女のペースで話は続いたが、水を向けると、風俗で働く別の意外な理由を話し始めた。
「貯金が趣味なの。というのも、今でも妹が児童養護施設にいるんですよ。私も去年までいたんだけどね。親がいないんで……」
彼女が養護施設に保護されたのは小学生の時。両親の虐待が原因だった。
「これから妹の学費が必要になるから、ひと足先に卒業した私が今のうちに働いておこうかなって。妹にはキャバクラで働いていることにしているの」
週平均4日の勤務で収入は月50万~80万円。料金2万3000円の6割が彼女の収入だ。ばらつきはあるが、1日3~4人の客が付く。かなりの収入を得ているが、贅沢はほとんどしていないと言う。
「いま住んでいるアパートは家賃8万円の1DK。生活は質素だし、自分でも倹約家だと思う。電子レンジが壊れて買い替えたいんだけど、勿体なくて悩んでるぐらい(笑)。でもディズニーランドにはよく行くの。ストレス発散になるし、これが唯一の贅沢かな。昔、親に連れて行ってもらって楽しかったから、これだけは今もやめられない」
仕事に不満はないが、一番怖いのは病気だと言う。
「店は病気を一番怖がるので、店長は『毎月検査をしろ』ってうるさいけど、自費だから、なかなかね……。店長も売り上げがある子にはあまり厳しく言えないみたい。その代わり、ものもらいでも出勤停止になっちゃうの。免疫が下がると病気に感染しやすくなるから、なるべく風邪を引かないようにしています」
34歳の彼氏がいる。風俗のバイトも彼の公認だ。
「彼は『きちんと目標を持って働くのなら、風俗だって立派な仕事だ』と言ってくれる。 私ね、橋下徹さんがすごく好きなんですよ。風俗を仕事と認めてくれたし、自分に信念を持っていると思う。私はガキだから分からないことも多いけど、風俗嬢だって絶対誰かの役に立ってるぞ! と思うんですよね」
※SAPIO2013年8月号