「生涯現役」「死ぬほどセックス」「20代を抱いて死にたい」──週刊ポストはこれまで一貫して、セックスをあきらめるな、と説いてきた。だが、自身の体験を通じ、そして小説を通じ、深き性の世界と向き合ってきた作家・渡辺淳一氏は、最新作『愛ふたたび』(幻冬舎刊)で全く異なる世界観を提示した。すなわち、「男たちよ、いいかげん、セックスをあきらめろ」と──。渡辺氏だからこそ響くこの言葉の意味するところとは。
「あなたたちは、何もわかっていない」
開口一番、本誌記者に向けられたのは、お叱りの言葉だった。これまで『失楽園』や『愛の流刑地』など数々の官能的な恋愛小説を世に送りだしてきた渡辺淳一氏。本誌の大人気企画『死ぬほどセックス』シリーズにぜひご登場願いたいと、取材に応じてもらったのだが……。
「死ぬまでセックス? そんなことできるわけがありません。人体というもの、雄というものが、何にもわかっていない。『ポスト』を作っているのは30~40代か、せいぜい50代の男性でしょう? 70、80の男の何がわかるのかね?」
その表情はやさしいものの、言葉は厳しい。
渡辺氏といえば、最新作『愛ふたたび』(幻冬舎刊)で、インポテンツになった73歳の整形外科医を主人公に、高齢者の性と愛のあり方を世に提示したばかり。ここは膝を正して、傾聴するしかあるまい──。渡辺氏が続ける。
「男性は勃起と射精に囚われすぎています。もちろん自分のペニスを女性の中に挿入したいと思う、これは男本来の願望でしょう。挿入して、射精しないかぎり満たされないと考える、人間の雄とはそういう生き物です。しかし、だからといって「死ぬまでセックスしたい」なんていうのは完全に間違っています。勃起して射精するというのは、大変なエネルギーと労力、そして気力が必要で、そんなことを死ぬ直前までできるわけがありません。
年をとれば体力もさまざまな機能も衰えて、60代後半から70代になれば性的行為はほとんどできなくなる。ところが『ポスト』も含めて、最近の週刊誌はできないことばっかり書いている。老いに対して本当に無知だと思いますよ」
※週刊ポスト2013年8月2日号