「悪いことをした人を反省させると犯罪者になります」──そう聞いて、えっ!?と、耳を疑う人も多いだろう。
しかし、これは殺人など、凶悪な犯罪者が収容されている刑務所で、7年前から更生支援を行っている岡本茂樹さんの経験から出た言葉だ。現在、立命館大学産業社会学部教授、さらに日本ロールレタリング学会理事長を務める岡本さんは、『反省させると犯罪者になります』(新潮新書/756円)を出版した。
「私はもともと、中学や高等学校などで教員をしていたのですが、その当時から、結局悪いことをしたら反省させる、という指導のパターンは変わっていません。でも、長年受刑者を見てきてわかったことは、彼らを更生させるためには、実は反省させてはいけないのです」
受刑者に個人面接をしたり、更生のためのプログラムを作って授業をしたりしている著者だが、受刑者に一切、反省を求めないという。学校同様、多くの刑務所でも反省や謝罪が強く求められており、「反省しさえすれば許す」という傾向があるというが、この“過ちを犯した人を厳しく反省させるべし”というあり方は、果たしてよい社会を生むのか? 著者はむしろ、より多くの犯罪者を生む危険があるという。
「以前、女優の酒井法子が覚せい剤取締法違反で逮捕されたことがありましたが、あの時、『贖罪』(朝日新聞出版)という本を書いています。その中で、“自分の弱さを戒め”“深く反省し~”と書いています。“弱いから”罪を犯したという犯罪者は多いのですが、人間は誰しも弱いもの。
でも、弱いからって誰もが覚せい剤に手を出すわけではありません。彼女の手記を読んでいくと、両親が離婚し義理の母から厳しくしつけられたことや、素直に自分が出せなかったことが書かれています。でもその後、人の何倍も努力して芸能界で活躍するわけですから、彼女の性格が弱いとは到底思えません。
彼女が見つめないといけないのは、自分の気持ちを抑圧して努力するなかで、どんな苦しみや悲しみ、ストレスがあったのか、ということです。そこを見つめないで反省だけしても、本当の解決にはつながらないと私は思っています」
酒井は現在、女優復帰し、更生の道を歩み始めているが、罪を犯した人間には必ず「その人なりの」理由がある。根本を見つめなければ犯罪は繰り返されるのだ。
※女性セブン2013年8月8日号