再生可能エネルギーで発電した電力を電力会社が買い取る「固定価格買い取り制度(FIT)」がスタートしてから1年。消費税増税前の駆け込み需要も追い風に、主に住宅用に設置する太陽光発電設備への関心が高まっている。
市場調査会社である富士経済の調べでも、住宅用太陽光発電システムの市場規模は3690億円(2013年見込み)で、2009年の調査開始から右肩上がり。2030年には累計導入戸数1000万戸以上が予想されている。
7月24日から行われている日本最大級の太陽光発電の展示会「PVジャパン」では、シャープがマンションのガラス窓に薄い膜状の太陽電池を埋め込める“シースルー発電機”を発表したり、パナソニックが垂直に立てて表と裏両面で発電できる太陽光パネルを出展したりと、国内メーカーの新製品がズラリと並んだ。
だが、市場の盛り上がりに反して、国内勢は危機感を強めている。
「中国や韓国メーカーが大量生産で安価な太陽光パネルを武器に、続々と日本市場に進出しています。中には目に見えにくいパネルのひび割れや、固定不足で局所的に発熱する“ホットスポット”の影響で、発電量が低下し続ける粗悪品も出回っています。このまま品質を無視した価格競争が続けば、普及の妨げになる恐れもあります」(国内電機メーカー担当者)
心配のタネは太陽光パネル自体の性能ばかりではない。
国民生活センターには売電収入や補助金について過剰な説明をして消費者をその気にさせる悪質な訪問販売業者や、取り付け工事・修理代金の水増しを不当に要求する業者に関する相談件数が多数寄せられている。そのクレーム件数も右肩上がりで、2012年には4407件に及んだ。
エネルギー産業に詳しい一橋大学大学院商学研究科教授の橘川武郎氏がいう。
「最近ではエネルギー再生ファンドなどと名乗って、単純にお金をかすめ取るような集団もいると聞きます。エネルギー制度に疎い消費者を狙って、あの手この手の詐欺が出始めているのです」
では、粗悪製品を掴まされたり、過剰なセールストークや詐欺に騙されたりしないためにはどうしたらいいのか。
「アフターサービスや品質保証期間の手厚い製品を選ぶことはもちろん、1社だけでなく複数の見積もりを取って、納得できる工事業者と契約したいところです。
そもそもFITは10キロワット以上で、標準的な家庭1軒の電気をまかなえる出力4.0キロワットでは全量買い取りはできません。そこで、複数の家庭をまとめて需給のマッチングをする自治体が品質のチェック機能を強めるなど、公的機関の役割が普及促進の過程でますます重要になってくるでしょう」(前出・橘川氏)
家庭用の太陽光パネルは工事費込みで200万円前後と、決して安いものではない。だが、初期投資の安さに踊らされて、売電による節約メリットが享受できなければ、無用の長物でしかない。