名匠が作り上げた日光カンツリー倶楽部(栃木県日光市)
伝統と格式を兼ね備えた名門ゴルフ場。歴史と伝統を重んじ、入会には厳重な審査が求められるエスタブリッシュメントのための倶楽部だ。そんな名門の多くを設計したのが名匠・井上誠一。その“匠の技”の1つが日光カンツリー倶楽部(栃木県日光市)だ。
戦後復興の槌音が響く1952年、小平重吉・栃木県知事と三菱銀行の頭取も務めた財界の重鎮・加藤武男が発起人となり、ゴルフ倶楽部建設に向けて動き出した。陣頭指揮を執った初代理事長・島田善介は迷わず井上誠一に白羽の矢を立てたが、候補地の選定はどこも井上の眼鏡にかなわず難航した。
結局、当初予定された山岳地から一転、男体山を望む大谷川の川床だった場所に造ることになった。ところが、一帯は転石に覆われ、土砂を切り盛りすることもできない。井上は、小川や松などの自生木を障害物とし、バンカーなど人工のハザードを極力抑える設計でその才能を如何なく発揮した。
開場の1955年には名誉会員である高松宮殿下の始球式で記念競技を開催。当時、井上は所属プロに「この松が育つ頃には日本屈指のコースになる」と語った。
名門倶楽部の例にもれず、入会には厳正な審査が待つ。現在のメンバーは約1200名。新規の入会は在籍5年以上の会員2名からの推薦状が必要で、申込書を3週間倶楽部内に掲示し、理事による面接を経て理事会で入会が承認される。
※週刊ポスト2013年8月2日号