天皇皇后両陛下が東京駅のホームに姿を見せられたのは、午前11時少し前のことだった。陛下が美智子さまの右手をしっかりと握られ、おふたりはゆっくりとした足取りで階段を上ってこられた。
7月22日、両陛下は午前11時発の新幹線特別列車で、定刻通り、福島に向けて出発された。東日本大震災後、両陛下は2011年5月、2012年10月に福島県を訪問されており、今回で3度目となる。
福島に到着された両陛下は、早速、飯舘村の菊池製作所福島工場を視察された。工場は福島第一原発事故の影響で居住制限区域(年間被曝量20ミリシーベルト超~50ミリシーベルト以下)にある。両陛下が同区域内に入られるのは、今回が初めてとなる。
今回の福島訪問では、これまでの“慰問”と異なる点があった。それは“公式”ではなく、あくまで“私的”なご訪問だということである。
今年4月、両陛下は長野県千曲市の「あんずの里」を訪ねられ、杏の花をご覧になりながら散策された。
両陛下が、場所と時期をご自分たちでお選びになった“私的”な旅行をされたのはこれが初めてで、陛下が今年12月に80才をお迎えになるということで、各地の名勝地などを旅行していただこうと企画されたものだった。
そのため、このときは“休暇”の側面が強かった。だが、今回の福島ご訪問は“私的”とはいえ、被災地を慰問され、被災者を励まされているため、“公的”な色合いが強いように感じる。
「今回も宮内庁は、万全ではない体調のなか、多忙な日々を送られる両陛下にのんびりとした時間を過ごしていただきたいと願い、私的旅行を提案したそうです。しかし、両陛下はご静養よりも“福島行き”を心から希望されたそうです」(前出・宮内庁関係者)
では、なぜ今回の福島ご訪問は“私的”な意味合いになったのだろうか。ある皇室記者がこう語る。
「両陛下は、これまで被害の大きかった岩手、宮城、福島の3県を2回ずつ慰問されています。
もし今回も公式に福島を訪問されれば、“どうして福島だけ3回なのか”といった声もあがりかねないと宮内庁は考えたようで、そのため当初の予定通り、“私的”な旅行というかたちを取ったそうです」
美智子さまが頸椎症性神経根症や腰椎の痛みのため、ご公務を休まれたのは6月中旬のこと。前述した通り、美智子さまは、ただ立っているのもおつらい状況で、歩かれるときには陛下の支えを必要とされることが多い。今回の福島ご訪問中も、左足を気にされている姿が見かけられた。
本来ならご静養を取られ、体を休める時間が必要なはず。それでも“被災地の人々を励ましたい”と願われ、実践されたのだ。
※女性セブン2013年8月8日号