ビジネス

任天堂「マリオ」「ゼルダ」などを他機種に供給しない理由

 ちょうど30年前、社会現象を巻き起こした「ファミリーコンピュータ」の発売以来、ゲーム会の雄として君臨してきた任天堂が、2期連続の営業赤字を出している。ライバルのソニー、マイクロソフトが新製品を発表するなか、任天堂に苦境の打開策は見えているのか、ジャーナリストの永井隆氏が報告する。

 * * *
 任天堂はハードメーカーであると同時にソフトメーカーでもあるのが特徴だ。2009年3月期に5552億円の営業利益を叩き出したのは、携帯ゲームの「ニンテンドーDS」、据え置き型の「Wii」のヒットに加え、「マリオ」シリーズをはじめとした豊富なソフトが業績を牽引したからだ。

 海外大手証券のアナリストの中には「任天堂がハードとソフトを切り離すと発表すれば、株価は2倍にも3倍にも上昇する可能性さえある」という見方もある。「マリオ」や「ゼルダの伝説」など有力タイトルを任天堂以外のハード(スマホを含む)に供給すれば、業績は劇的に回復するという指摘だ。

 しかし、任天堂は決してそうはしない。「一時的に業績がよくなっても、スマホやタブレットでは『マリオ』の真の面白さが味わえず、長期的にはブランド価値の低下につながる」(同社関係者)というのが理由だ。

 頑固とも思えるほどの“自前主義”。だが、それが苦戦中だ。任天堂関係者が内幕を語る。

「2011年2月に発売した『ニンテンドー3DS』は出足こそ好調だったものの、発売約2週間後に東日本大震災が発生。CMを自粛し、勢いは止まってしまった。同年8月には、発売後6か月弱で2万5000円から1万5000円に本体価格を大幅値下げ。同時に、ソフトの開発チームを増強して、ゲームのタイトルを充実させた。

 それが功を奏して国内では勢いを取り戻せたが、その分(2012年11月発売の)WiiU向けのゲームには開発者を思うように割けなかった。このことがWiiUの低迷につながったのです」

 WiiUは、コントローラー(「GamePad」と呼ぶ)に液晶画面があり、テレビとの2画面でも、単体でも遊べるのが特徴だ。

 2006年発売のWiiは、CMで話題になった「Wii Sports」などが大ヒットした。これに対しWiiUは最初こそ勢いがあったものの、今年に入って大型タイトルの不足が響き、急ブレーキがかかった。発売から今年3月末までの5か月間で550万台の販売目標を掲げていたが、実績は345万台だった。

 任天堂は今後、テコ入れとして7月の「ピクミン3」、9月の「ゼルダの伝説 風のタクト HD」など自社の大型タイトルを次々と投入していく。つまるところ、「任天堂は愚直に、面白いソフトを出していくことしか道はない」(別の同社関係者)ということだ。

※SAPIO2013年8月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

石川県の被災地で「沈金」をご体験された佳子さま(2025年4月、石川県・輪島市。撮影/JMPA)
《インナーの胸元にはフリルで”甘さ”も》佳子さま、色味を抑えたシックなパンツスーツで石川県の被災地で「沈金」をご体験 
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で天皇皇后両陛下を出迎えた女優の藤原紀香(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA)
《天皇皇后両陛下を出迎え》藤原紀香、万博での白ワイドパンツ&着物スタイルで見せた「梨園の妻」としての凜とした姿 
NEWSポストセブン
何が彼女を変えてしまったのか(Getty Images)
【広末涼子の歯車を狂わせた“芸能界の欲”】心身ともに疲弊した早大進学騒動、本来の自分ではなかった優等生イメージ、26年連れ添った事務所との別れ…広末ひとりの問題だったのか
週刊ポスト
2023年1月に放送スタートした「ぽかぽか」(オフィシャルサイトより)
フジテレビ『ぽかぽか』人気アイドルの大阪万博ライブが「開催中止」 番組で毎日特集していたのに…“まさか”の事態に現場はショック
NEWSポストセブン
隣の新入生とお話しされる場面も(時事通信フォト)
《悠仁さま入学の直前》筑波大学長が日本とブラジルの友好増進を図る宮中晩餐会に招待されていた 「秋篠宮夫妻との会話はあったのか?」の問いに大学側が否定した事情
週刊ポスト
新調した桜色のスーツをお召しになる雅子さま(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA)
雅子さま、万博開会式に桜色のスーツでご出席 硫黄島日帰り訪問直後の超過密日程でもにこやかな表情、お召し物はこの日に合わせて新調 
女性セブン
被害者の手柄さんの中学時代の卒業アルバム、
「『犯罪に関わっているかもしれない』と警察から電話が…」谷内寛幸容疑者(24)が起こしていた過去の“警察沙汰トラブル”【さいたま市・15歳女子高校生刺殺事件】
NEWSポストセブン
豊昇龍(撮影/JMPA)
師匠・立浪親方が語る横綱・豊昇龍「タトゥー男とどんちゃん騒ぎ」報道の真相 「相手が反社でないことは確認済み」「親しい後援者との二次会で感謝の気持ち示したのだろう」
NEWSポストセブン
「日本国際賞」の授賞式に出席された天皇皇后両陛下 (2025年4月、撮影/JMPA)
《精力的なご公務が続く》皇后雅子さまが見せられた晴れやかな笑顔 お気に入りカラーのブルーのドレスで華やかに
NEWSポストセブン
大阪・関西万博が開幕し、来場者でにぎわう会場
《大阪・関西万博“炎上スポット”のリアル》大屋根リング、大行列、未完成パビリオン…来場者が明かした賛&否 3850円えきそばには「写真と違う」と不満も
NEWSポストセブン
真美子さんと大谷(AP/アフロ、日刊スポーツ/アフロ)
《大谷翔平が見せる妻への気遣い》妊娠中の真美子さんが「ロングスカート」「ゆったりパンツ」を封印して取り入れた“新ファッション”
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 高市早苗が激白「私ならトランプと……」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 高市早苗が激白「私ならトランプと……」ほか
週刊ポスト