「衆参のねじれは解消した。政治を前に進めていく」──。参院選に大勝を収めた安倍晋三首相は、〈決められる政治〉の断行を高らかに宣言した。が、その足下では新たな「ねじれ現象」が生じている。
この「ねじれ現象」は茶番劇では済みそうにない。7月23日から日本が交渉に正式参加したTPP(環太平洋経済連携協定)の加盟問題だ。現在、党内議連「TPP参加の即時撤回を求める会(反TPP議連)」の会員は236人。党所属議員の「過半数」に相当する。
今回の参院選で5選を決めた同会の支柱的存在である尾辻秀久・参院議員は、当選の万歳三唱をすると、「反対なものは反対なのでずっと反対していく!」と声を張り上げた。
TPP反対議員の大半は、選挙支援にあたってJA(農協)の政治団体「農政連」と政策協定書を交わし、「コメや牛肉などの重要品目に除外適用がなされない場合は、即刻、交渉から離脱する」ことを約束し、署名した。
農政連関係者は、「除外適用が明確に確認できない限り、TPP参加は認めない」というが、23日からマレーシアで開始された交渉は「例外なき参加」の方向で進んでいるとされる。
「政府がTPPの首席交渉官として派遣した鶴岡公二氏は、外務省で条約局畑を歩いてきた“条約締結のスペシャリスト”。つまり国内の農産物を守ることよりも、条約を結ぶことが優先事項となっている」(農水省幹部)。その時、“TPP反対誓約書”を書いた議員はどう動くのか。
「農村を地盤とする議員は農政連の票がなければ当選できない。強固な地盤を持つ議員は、刺客を差し向けられる覚悟で離党するだろう」(反TPP派の議員)
自民党内のTPP賛成派は、小泉進次郎氏はじめ都市部選出の若手議員が多い。「農村vs都市」「ベテランvs若手」という“党内ねじれ”は、早くも巨大政権の亀裂を生み出している。
※週刊ポスト2013年8月9日号