7月21日の参議院選挙で大勝し、満面の笑みを浮かべた安倍晋三首相だが、唯一といってもいい苛立ちを示したのが、テレビ東京の選挙特番で池上彰氏が発したこの問いかけだった。
「オバマ大統領に嫌われているみたいですね?」
池上氏がそう問うと、安倍氏は憮然とした表情で、「それはずいぶん心配性というか、コンプレックスがあるようなお話だと思いますが、そんなことは全くありません」との見解を示し、「日米同盟の信頼関係は揺るがない」と付け加えた。
それを証明してみせるかのように、25日からの東南アジア訪問では、シンガポールで米国のバイデン副大統領との会談をセットし、日米関係の良好さをアピールした。だが、そうした安倍首相の米国重視姿勢とは裏腹に、オバマの「安倍嫌い」はさらにエスカレートしているとの指摘もある。
在米ジャーナリストで、パシフィック・リサーチ・インスティテュート所長の高濱賛氏が語る。
「今回の安倍-バイデン会談は、米国では無関心でした。バイデンのアジア訪問は、“息抜き外交”で、出発前に行なわれた米メディア向けのブリーフィングでも“安倍との会談”は話題にも出ませんでした。米国はこの会談を儀礼的なものとしか見ていない」
また、参院選中盤の12日に、オバマ氏が新しい駐日大使にキャロライン・ケネディ(ケネディ大統領の娘)を指名したことが明らかになった。元駐レバノン大使の天木直人氏が指摘する。
「キャロライン氏はオバマ大統領以上のリベラル派。外交官としての対話ができたシーファー、ルースら前任者と違い、保守色を鮮明にしつつある安倍政権にとって厄介な存在になる可能性が高い」
安倍首相が日米の緊密さをアピールすればするほど、ねじれ具合が露わになるのは皮肉というほかない。
※週刊ポスト2013年8月9日号