ビジネス

ドラッグストアのコンビニ化 薄利の食料品を売る理由とは?

 いま、郊外のみならず街中にも溢れるドラッグストアは、「何でも揃う」が当たり前。医薬品はもちろん、化粧品、食料品、日用雑貨、酒やタバコまで売っている。昔ながらのクスリ屋さんのイメージからは程遠く、ほとんど“コンビニ化”していると言っていい。

 その勢いは出店数にも表れている。日本チェーンドラッグストア協会のまとめによれば、全国のドラッグストア総店舗数は1万7144店(2012年度)。5万店規模のコンビニから比べれば大きな勢力ではないものの、ここ10年以上、着実に右肩上がりで伸びてきた。

 ドラッグストアが食料品や日用品を扱うメリットはどこにあるのか。流通アナリストでプリモリサーチジャパンの鈴木孝之氏が解説する。

「ドラッグストアの稼ぎ頭は、なんといっても約4割もの粗利益が出る一般医薬品の販売。その儲けを支えに、食料品や日用品をコンビニよりも2~3割値引きして特売することで、薄利でも集客力を上げようという戦略なのです」

 コンビニ客を奪うには、エリア毎に細かい商圏人口をカバーする出店規模の拡大が欠かせない。そこで、巨大な郊外店よりも都心部で店舗面積を小さくした「コンビニ型ドラッグストア」が誕生しているというわけだ。

 7月に業界2位のサンドラッグがJR総武線の小岩駅近くに「サンドラッグCVS(コンビニの略)」をオープンさせたのも、その一例だ。店内には弁当類の惣菜をはじめ、いれたてコーヒーやATMまであり、コンビニ業態との垣根はまったくないどころか、クスリを売っている分だけドラッグストアのほうが便利に思える。

 前出の鈴木氏は、今後もドラッグストアのコンビニ化が止まらないと見ているが、その理由のひとつに「高齢化」を挙げる。

「最近は地方だけでなく都会の高齢化も進み、買い物の行動半径はどんどん狭くなっています。ドラッグストアが食品や日用品を拡充することで、お客さんはあちこちでいろんなものを買い回らなくて済む。ワンストップショッピングで買い物の利便性はさらに高まるのです」(鈴木氏)

 だが、コンビニ業界もドラッグストアの侵攻を静観しているばかりではない。医薬品を販売する条件である「登録販売者(有資格)」の紹介を行ったり、医療機関の処方箋を受け付ける調剤薬局と提携してコンビニ併設薬局の出店拡大を目論んだりと、業容拡大に余念がない。

 コンビニでもっとも医薬品や処方薬の取り扱いに積極的なのはローソン。すでに調剤薬局大手のクオールと組んで調剤薬局併設型コンビニを20店以上展開。2014年3月末までに100店舗出店の目標を掲げる。また、ファミリーマートも全国各地の調剤薬局計6社とFC契約を結び、地域ごとに小さな薬局を束ねて新業態店舗の開発を急いでいる。

 もちろん、ドラッグストアも業界首位のマツモトキヨシをはじめ、調剤薬局事業への参入は珍しくなくなった。一般医薬品のネット販売が解禁されたことで、それよりも効き目の高い処方薬の取り扱いを巡る争奪戦が始まっているのだ。

 実は、ドラッグストアやコンビニが調剤薬局を囲い込んでいるのは、次のビジネスモデルをも見据えているからに他ならない。

「店舗立地も飽和状態になる中、ゆくゆくは生活必需品の宅配事業に加え、登録販売者や薬剤師によって一般医薬品・処方薬も届けるサービスが広がれば、地域医療を担うインフラとして主役に躍り出ることができます。これは高齢者ニーズと結びつく確実なマーケットとなるだけに、コンビニもドラッグストアも今から布石を打っています」(鈴木氏)

 現在、国内コンビニ市場は約10兆円。一方、ドラッグストアは約5兆円と半分だが、調剤薬局の市場も約5兆円あり、併せればコンビニとほぼ互角になる。ドラッグストアがどこまで医薬品を武器に巨大なコンビニ業界を脅かすことができるか、目が離せない。

関連キーワード

関連記事

トピックス

女優の広末涼子容疑者(44)が現行犯逮捕された
「『キャー!!』って尋常じゃない声が断続的に続いて…」事故直前、サービスエリアに響いた謎の奇声 “不思議な行動”が次々と発覚、薬物検査も実施へ 【広末涼子逮捕】
NEWSポストセブン
再再婚が噂される鳥羽氏(右)
《芸能活動自粛の広末涼子》鳥羽周作シェフが水面下で進めていた「新たな生活」 1月に運営会社の代表取締役に復帰も…事故に無言つらぬく現在
NEWSポストセブン
「居酒屋で女将をしている。来てください」と明かした尾野真千子
居酒屋勤務を告白の尾野真千子、「女優」と「女将」の“二足のわらじ” 実際に店を訪れた人が語る“働きぶり”、常連客とお酒を飲むことも
週刊ポスト
運転中の広末涼子容疑者(2023年12月撮影)
《広末涼子の男性同乗者》事故を起こしたジープは“自称マネージャー”のクルマだった「独立直後から彼女を支える関係」
NEWSポストセブン
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された
《病院の中をウロウロ…挙動不審》広末涼子容疑者、逮捕前に「薬コンプリート!」「あーー逃げたい」など体調不良を吐露していた苦悩…看護師の左足を蹴る
NEWSポストセブン
北極域研究船の命名・進水式に出席した愛子さま(時事通信フォト)
「本番前のリハーサルで斧を手にして“重いですね”」愛子さまご公務の入念な下準備と器用な手さばき
NEWSポストセブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《中山美穂さん死後4カ月》辻仁成が元妻の誕生日に投稿していた「38文字」の想い…最後の“ワイルド恋人”が今も背負う「彼女の名前」
NEWSポストセブン
山口組分裂抗争が終結に向けて大きく動いた。写真は「山口組新報」最新号に掲載された司忍組長
「うっすら笑みを浮かべる司忍組長」山口組分裂抗争“終結宣言”の前に…六代目山口組が機関紙「創立110周年」をお祝いで大幅リニューアル「歴代組長をカラー写真に」「金ピカ装丁」の“狙い”
NEWSポストセブン
中居正広氏と報告書に記載のあったホテルの「間取り」
中居正広氏と「タレントU」が女性アナらと4人で過ごした“38万円スイートルーム”は「男女2人きりになりやすいチョイス」
NEWSポストセブン
広末涼子容疑者(写真は2023年12月)と事故現場
《広末涼子が逮捕》「グシャグシャの黒いジープが…」トラック追突事故の目撃者が証言した「緊迫の事故現場」、事故直後の不審な動き“立ったり座ったりはみ出しそうになったり”
NEWSポストセブン
Tarou「中学校行かない宣言」に関する親の思いとは(本人Xより)
《小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」》両親が明かす“子育ての方針”「配信やゲームで得られる失敗経験が重要」稼いだお金は「個人会社で運営」
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《妊娠中の真美子さんがスイートルーム室内で観戦》大谷翔平、特別な日に「奇跡のサヨナラHR」で感情爆発 妻のために用意していた「特別契約」の内容
NEWSポストセブン