参院選でも圧勝した安倍晋三首相はアベノミクスを今後も強力にすすめていくだろうが、目先の数字に捕らわれて、福祉への配慮が薄くなるのではないかという懸念もあがっている。諏訪中央病院名誉院長で『がんばらない』著者の鎌田實氏が、いまこそ現代の長寿県、長野で健康長寿について研究することが、医療費や保険料の削減にもつながると解説する。
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2010年、日本の総医療費の対GDP比は9.5%。OECD加盟諸国の中では16位で、安い医療費にもかかわらず世界有数の長寿国になっている。
中でも、長野県は先頭を走っている。平均寿命は日本一。現在、わが国の健康上の問題がなく日常生活に制限がない期間を示す「健康寿命」と「平均寿命」の差は、男性で約9年。女性で約13年といわれている。当然、この期間に、介護保険を利用する人が多くなるわけだが、今、介護保険の利用者は右肩上がり。これ以上、介護費用や医療費が上がり、保険料が上がっていくと、一般庶民の負担は一層重くなっていく。
介護保険を利用しないで自立しているかどうかを指標とする健康寿命でも、長野は日本一。平均寿命と健康寿命は、男性はほとんど同じ。女性は約2年のギャップがある。高齢者の医療費は非常に安い。これは何故なのかを科学的に研究し、日本中に広めれば医療費を安くすることも可能だ。
また、日本総研の『都道府県別幸福度ランキング』(12年調べ)では、総合部門でも長野県が堂々の1位を獲得している。
今こそ、“幸せで長生きするにはどうしたらいいのか”を研究すべき時期だ。その施設は東京ではなく長野県に作り、幸せで長寿の理由を現地で徹底研究すべきだろう。
●鎌田實(かまた・みのる):1948年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県の諏訪中央病院に赴任。現在同名誉院長。ベストセラー『がんばらない』、新刊『がまんしなくていい』(集英社)ほか著書多数。チェルノブイリの子供たちや福島原発事故被災者たちへの医療支援などにも取り組んでいる。
※週刊ポスト2013年8月9日号