ライフ

近代以前の日本では「巨根」に否定的な傾向あったと記す書籍

【書評】『性欲の研究   エロティック・アジア 』(井上章一著/平凡社/1890円・税込)

 本書は、「性欲」を切り口とした東アジア近代史に真正面から取り組んだ研究書である。収められているのは、美人論で知られる編者が代表を務める「関西性欲研究会」のメンバーによる対談、論文、文献紹介、コラムの数々。その研究テーマは、近世中国に実在した女装の男娼「相公」の実態から、ハルビンにおける大日本帝国軍人のストリップ体験、現代韓国の美容整形事情まで幅広い。

 スケベ心は万国共通、なかでも東アジアに息づくエッチ事情は互いに強い絆で結ばれていると編者は指摘する。たとえば、〈19世紀中葉の英仏でなりたち、アジアのモダンロードで助平の度合いを強めた「トルコ」風呂が、1920、30年代の上海にあらわれた。それが、20世紀中葉の日本に伝来し、今はソープランドと名前をかえ〉た(編者と劉建輝との対談『上海モダンの風俗事情』)。

『日中おまた事情性器から読み解く理想像 男性器編』(梅川純代・日本大学専任講師)では、近代以前の文献に残された日本と中国それぞれの「理想のペニス」像を比較。中国では性愛技法を超えるものとして「巨根」を求めたのに対し、日本では「大きすぎるペニス」には否定的な見解を示す傾向があったことを指摘する。「理想のペニス」はかくも違うが、その根底に「女を満足させたい」という熱望があるのは同じだという。

 これに限らず、編者お得意の徹底した文献渉猟によって、昨今騒がしい日中の政治的関係とは裏腹に、太くて熱いスケベな交流が脈々と息づいてきたことの例証が次々と挙げられていく。政治などクソくらえ、スケベ心こそ人類の普遍的価値だと言わんばかりの姿勢に思わずほくそ笑みたくなる。

※SAPIO2013年8月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン