自民党の復活とともに採算の疑わしい公共事業が続々復活しているが、震災復興事業でも、不思議な防災事業が行なわれている。小野寺五典・防衛相の地元、気仙沼では津波で家屋が壊滅した地区に事業費200億円で高さ15メートルの防災堤防を張り巡らす計画が進められている。だが、避難生活中の同地区の元住民は高台に移転することになっており、もう誰も住んでいない。そこに15メートル堤防を建設して、一体、何を守ろうというのか。
公共政策論が専門の五十嵐敬喜・法政大学教授が語る。
「自民党の公約を見ると、経済活性化につなげるという総合的な計画がなく、ゼネコンや地元にカネを落とし、雇用や仕事をつくる景気対策が目的となっている。そうした公共事業のやり方は将来に禍根を残す」
しかし、安倍政権はもはや引き返すことはできない。
それというのも、自民党は国土強靭化をエサに、今年2月、石破茂幹事長ら党役員の連名で、ゼネコンの業界団体「日本建設業連合会」に4億7100万円もの選挙資金の献金を要請したからだ。いわば、公共事業大盤振る舞いの見返りを前金で求めたわけである。
道理で、その後に行なわれた石破氏をはじめ自民党各派のパーティはどこもゼネコン関係者らで大盛況だった。二階派はパーティで2億円、安倍首相の出身派閥の町村派は3億円を集めたと見られ、これも業界からの“前金”に等しい。
このゼネコンへの献金要請文書は共産党の志位和夫・委員長が参院選中の党首討論で明らかにしたが、追及された安倍首相は泡をくって弁解もできず、しどろもどろだった。
選挙前に200兆円の公共事業をぶち上げ、裏ではゼネコンに票とカネを請求、そのくせ国民には「災害に強い国土をつくる」と説明する。これではまさに亡国の列島改造計画である。
※週刊ポスト2013年8月9日号