もうすぐ立秋を迎え時候の挨拶も残暑見舞いになるが、厳しい暑さは衰えそうにない。気象庁は異常天候早期警戒情報を発表し、関東から九州にかけて再び猛暑になる可能性があるとの見通しを示している。ところが、ドラッグストアなどの店頭では、家電を使わずに涼しさを感じるスプレーやシートなどの冷感商品の売り場が小さくなり始めているのだ。
まだまだ暑い日が続きそうだが、冷感商品の売り場縮小は平年通りで、特別なことではないそうだ。加えて、私たちの印象と違って“今年の夏はそれほど暑くない”という。
各種の冷感製品を販売する株式会社白元のアドコミュニケーション課によれば、「熱中ガードアイスノン」や「どこでもアイスノン」等について2012年比で約3割増の売上高という春先に掲げた販売目標は、今のところギリギリ届くかどうかだという。
「梅雨明け直後はとても暑かったので、前年同時期比が200%という実績が二週間も続きました。今年は大幅増になるのではと期待したのですが、その後は暑くない日が続いて伸びなかった。日中は暑くなっても、ゲリラ豪雨などで気温が下がって夜はクーラーがいらないほど涼しい日もありますよね。そんなに暑くなっていないので、梅雨明けのときの勢いは続きませんでした」(白元アドコミュニケーション課)
前年より売上高は伸びているものの予測の範囲を超えないため、平年通り冷感商品の製造は6月までで終了し、現在は在庫で調整している段階だという。「2月の段階では長期予報で猛暑となっていたので、それをもとに立てた控えめな目標だったんですが」と担当者も落胆を隠さない。
冷却シートの「熱冷まシート」や冷感スプレー「シャツクール」を販売する小林製薬株式会社も、製造は6月で終了し7月からは出庫調整で対応しているという。同社は冷感商品の4~9月期売り上げを前年比17%増の36億円、子会社の桐灰化学の「熱中対策」シリーズは前年比26%増の10億円を見込んでいた。
「全体としては予想通りの売り上げ増で着地しそうです」と同社広報部はいうが、少し残念そうだ。
「冷却スプレー『シャツクール』のような消耗品は予想を上回る好調な実績を出していますが、それ以外は予想ほどの伸びにはなっていません。『あせワキパッド』など買い換え需要が伸びなかった」
残暑が厳しく長くなり需要が伸びた場合でも、在庫が残っている地域から商品を移動させるなどして対応し、増産して対応することはないそうだ。
「春夏向けの商品は6月までで製造を終了し、すでに秋冬向けや芳香剤など通年向けの製造ラインになっています。ある製品の人気が高まった場合、食品や飲料は増産対応するケースが多いと思いますが、生活用品の場合は製造してから店舗に届くまでに時間がかかるので店頭に並ぶ頃にはブームが落ち着いてしまっている可能性が高いのです。返品在庫を抱えるリスクもあるので、増産で対応することはないですね」(小林製薬広報部)
気象庁によれば、東京で熱帯夜(最低気温が25度より下がらない日)がもっとも多かったのは2010年の56日間。継続日数は、やはり2010年の8月10日から9月7日の29日間だ。2番目に熱帯夜が多かったのは2011年と2012年の49日間。2012年は8月11日~8月23日まで23日間も連続しており、2011年は9月に11日間も記録しているのが特徴的だ。
いまのところ真夏日の日数は昨年とあまり変わらないが、ゲリラ豪雨の影響で夜は比較的過ごしやすい日が多く、7月末時点で東京の熱帯夜はわずか11日。だが、近年の傾向を見ると、残暑が厳しくなる可能性もある。
在庫限りの冷感商品は、いまのうちに手に入れておいた方が得策かもしれない。