人生最大の買い物は「家」と言われるが、「終の棲家」については、多くの人が経験がないゆえ、「よくわからないまま慌てて買った」「チラシを見て連絡した業者に言われるままに購入した」など、トラブルに巻き込まれるケースがよくある。具体的な事例をいくつか紹介しよう。
(1)「民営霊園を購入した後、墓地の開発会社が負債を抱えたために競売にかかり、競り落とした新しい業者から数十万円もの管理費の支払いを請求された」
『はじめてのお墓の買い方』(講談社刊)の著者で、幕張霊園責任役員の小林隆氏が指摘する。
「開発業者が寺院など宗教法人の名前を借りて霊園を開発する『名義貸し』の墓地で見られたケースです。経営権が暴力団関係者の手に渡った事例もあります。できれば宗教法人の代表者を確認し、会ってみるのがよいでしょう」
(2)人気の区画に決めて購入したが、霊園指定の石材店で扱う墓石が非常に高額だった。解約したが、永代使用料は返還してもらえなかった。
「霊園の使用規則で石材店の指定や解約時の永代使用料の返還の有無が定められているケースがほとんど。事前にしっかり確認しておきたい」(お墓案内センター代表・寺田良平氏)
(3)墓石を購入してたった2年で黒御影石が茶色に変色、ひび割れも目立つように。文句を言っても、営業担当は「天然のものだからしょうがない」の一点張り……。
「見積書などで石の種類と産地、加工地は確認し、保証書のある石材店で購入することが肝要。2~3年で変色する場合、石に問題があることが多い。保証書があれば一定期間は無償で修理してもらえます」(小林氏)
(4)改葬を寺院に告げたら、100万円もの離檀料を請求された。
「特に地方では檀家の支えで寺院経営が成り立っているために、基本的に檀家から抜けることは快く思われない。へそを曲げられて法外な離檀料を請求されないためにも、事前にしっかり住職と相談することを勧めます」(寺田氏)
(5)10年前に購入した墓地が知らないうちに他人名義になっていた。
「管理料を滞納していると、墓地が他人名義になることがあります。誰が管理料を納めるのか、家族間ではっきりさせておくことが必要です」(小林氏)
事前通告なしに他人のものになることはないが、滞納期間が3年を過ぎると墓地を使用する権利を喪失するのが一般的だという。
(6)「宗旨・宗派不問」の寺院墓地のはずが、檀家になることを強要されて困った。
小林氏が解説する。
「お墓の販売に際して、檀家になる必要があることを告げると売れなくなるので『宗教不問』としていることがありますが、あくまでも今までの宗教は問わないという意味に過ぎません。寺院墓地に入れば檀家になるのが基本です。解釈をめぐり揉めるケースがよくあるので事前に確認してください」
※SAPIO2013年8月号