赤ちゃんなら玩具にベビー服、入学したらランドセルに勉強机、成長してからも3世代で楽しむ旅行プラン……。こうした「孫向けコンテンツ」は、100兆円規模といわれるシニアマーケットの中でも、各業界が特に商品開発に力を注いでいる分野だ。
その流れは、「マネーの世界」にも到来している。“孫投資”を謳った「教育資金贈与信託」の大ヒットを受け、金融機関の企画部門では「孫商品」の開発が至上命題になっている。では、今後はどんな金融商品が登場してくるのだろうか。税制改正や行政の認可というハードルはさておいて、各金融機関の開発担当者たちの“新商品構想”を先取り公開しよう。
【信託銀行の担当者】
「教育資金贈与信託の成功で、入学や進学と同様、祖父が孫の節目を祝うイベントが、贈与信託の新商品の材料になるのは確実です。
特に注目しているのは結婚資金の贈与信託。結婚情報誌『ゼクシィ』の調査では、結婚式費用の全国平均は344万円で、これに結納や新婚旅行、新居準備を加えると、教育資金に匹敵する金額になります。“孫の結婚式に出るのが夢”という方も多く、晩婚対策や少子化対策にも役立つので、行政も賛同するのではないかと期待しています。同様に、子供や孫世代のための『出産資金贈与信託』も企画が持ち上がっています」
【メガバンクの担当者】
「銀行で扱う国債で『孫キャンペーン』ができないかと考えています。たとえば10年もの、20年ものといった長期国債に限って非課税にしたり、購入手数料をサービスしたりする。“孫のために将来の日本を支えよう”といった謳い文句なら、第1世代の購入意欲をかき立てるかもしれませんし、長期金利の安定化に寄与できるので国も歓迎できる内容になります」
【証券会社の担当者】
「孫が暮らす未来の世界を支えるような技術やサービスを持つ企業を組み入れた『孫の代の社会を支えるファンド』なら、投資に消極的な高齢者層も興味を示すのではないかと思います。たとえば環境、バイオ、宇宙開発の組み合わせなど、未来社会で成長が期待される企業を組み入れれば、関心を集めるのではないでしょうか。
すでに女性の雇用に積極的な企業で構成したファンドは商品化され、運用成績も好調です。その“孫バージョン”がお目見えするのはそう遠くないと思います」
【生命保険会社の担当者】
「進学に伴う教育費をカバーするための『学資保険』があるが、これは、親が子供のために毎月コツコツと保険料を支払うタイプが一般的です。
まとまった資金がある祖父世代が一括払いすることで、より利回りが有利になる『孫のための学資保険』は十分に商品化が可能でしょうね」
※週刊ポスト2013年8月16・23日号