東京電力福島第1原発から汚染水が海へ流出している問題は、私たちの「食の安全」への意識をまた新たにさせている。
原発事故以前の“食の関心事”といえば、「残留農薬」や「添加物」、「原産国」だった。輸入農産物の残留農薬やBSE問題、鳥インフルエンザに毒物混入事件、食品偽装事件などが頻発し、改めて注意喚起がなされた。やがてロハス、スローフード、オーガニックといった食のトレンドも誕生し、有機野菜や無農薬野菜、無添加食品が注目を集めるようになった。
そのような背景から利用者が急増し、急成長を遂げているのが食材宅配サービス業者だ。会員になることで各社こだわりの食材や食品、ひいては日用品にいたるまでの様々な商品を購入できる。また、自宅まで届けてくれるという利便性も忙しい主婦には嬉しい点だ。
原発事故以降は多くの業者で放射性物質検査を行なうようになり、利用者がさらに増えているという。2015年度に食材宅配業の市場規模は、対2011年度比で1.2倍、1兆2000億円に達すると見られている(矢野経済研究所の予測)。
なかでも徹底した品質管理に定評のあるのが「らでぃっしゅぼーや」だ。自社独自の商品取扱基準「RADIX」の設定や、放射性物質の許容数値を国の1/2までとするなど、利用者の安心・安全に寄り添う姿勢を明らかにしている。1級フードアナリスト里井真由美氏が同社を取材した。
利用者の信頼を得るための施策について尋ねる里井氏に、経営企画部の益貴大氏はこう答えた。
「情報開示/品質管理を行なうにあたって、商品取扱基準をかなり厳しく設定しています。有機野菜を名乗る上で取得が必要な『有機JAS』基準に近い基準ですが、さらにトレーサビリティ(追跡可能性)を明確にするために細かい項目となっています。
また、私たちが得た生産者の方に関する情報などは、すべてお客様にも公開しています。住所などもお伝えするので、お客様から生産者の方へ『にんじん、とってもおいしかったです』とお手紙が届くんですよ。品質はもちろんですが、人と人とのつながりを大切にしながらお客様へ商品を運ぶ、この姿勢を何より大切にしています」
「らでぃっしゅぽーや」は、放射性物質検査について、自社検査を行なう社もあるなかで、第三者機関に委託をしている。その理由について、執行役員品質保証部担当の親跡博史氏が語った。
「放射性物質検査は、非常に専門性の高い検査です。25年以上の実績をお持ちの無添加食品販売協同組合検査センターならば、確かな数値をお客様に公開できると確信したので、お願いすることにしました。(なお、検査品目が増えた場合に備えて複数の検査機関で検査しています)
放射性物質の怖さ、人体への影響、これからどうなるのか、すべて不透明ですよね。そのなかで私たちにできることは、『○○シーベルト以上の放射性物質が検出されたら販売しません』と数値を明確にすること、そして正確な検査結果をお客様にお伝えすることだと思うのです」
残念ながら、原発事故によって私たちの食卓に落とされた暗い影は、まだまだ消えそうにない。ならば、消費者にとって「らでぃっしゅぼーや」のような“食のパートナー”を見つけておくのは賢い選択かもしれない。