今年、ハワイ・ホノルル美術館やイギリスの大英博物館で展覧会が開催されるなど、ここにきて海外でも大きな注目を集めている春画。約24年前に来日したオフェル・シャガン氏(47)も春画に強く魅了され、そのコレクションは現在、約7300点にのぼるという。
「喜多川歌麿の春画を初めて見せられたとき、目の前には剥き出しの女性器があるのに、ポルノだとは思いませんでした。一般的にポルノは自慰の道具であり、例えば、レイプや不倫が題材なら男性が果てれば終わりです。
しかし、春画ではレイプは罪深いものとして描かれ、浮気が妻にバレた後の修羅場など、行為の後の出来事も12枚の絵図できちんと描かれます。素晴らしい技術で描かれた春画、これは人間の喜怒哀楽が活写されたアートなんだと感じました」(シャガン氏)
現代に横行する歪んだ性表現。一方、春画には絵師の意図が見られるという。
「絵師の意図は大きく分けて3つあると思います。一つは性の指南書としての側面。こんなエッチは面白いかも、こんなエッチは人を傷つけるよ、そうことを教えてくれます。また、人気の歌舞伎役者が実はこんな人なんだというような、当時のうわさ話・ゴシップを描いた作品も多いです。そしてもう一つが社会風刺。お坊さんや権力者が、実は搾取していて横暴な人たちなんだという社会の不満を代弁している作品も多いです」(同前)
古き良き日本の文化や風俗、考え方がこれほど理解できる材料はないと話すシャガン氏。日本でも春画が広く再評価されるよう、コレクションの紹介をさらに続けていきたいと話す。
※週刊ポスト2013年8月16・23日号