金正日総書記の死後、世襲によって強引に権力を掌握し、それなりに安定した政権運営を進めているかに見える北朝鮮の“三代目”金正恩第一書記だが、厚いベールの向こうでは、「政権崩壊」へのカウントダウンが始まっているという。“北朝鮮崩壊”で予想されるシナリオとはどんなものか。新刊『北朝鮮はどんなふうに崩壊するのか』(小学館)を上梓したジャーナリスト・惠谷治(えや・おさむ)氏が解説する。
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北朝鮮は体制維持のためにミサイル・核開発を続けざるを得ない状況にある。かつて金正日が「人民たちがろくに食べることもできず、豊かな生活もできないことを知っている」と言いながら、ミサイルや核の開発に平然として莫大な予算を投じてきたように、金正恩もまた「非核化」提案を受け入れるわけにはいかないのだ。
となると、そこから導かれる結論は、限られてくる。金正恩政権が崩壊するとすれば、どのようなシナリオが予想されるのだろうか。
【1】金正恩暗殺による混乱での政権交代(労働党支配の継続)
【2】軍事クーデターによる政権転覆(新政権の樹立)
【3】民衆蜂起を契機とした政権崩壊(難民流出の可能性)
【4】韓国の左翼政権の再登場で「連邦制」による朝鮮統一
【5】中国人民解放軍の進出(傀儡政権の成立)
【6】米韓軍による北進・占領(韓国による統一)
思いつくままに並べても、以上のような状況が考えられるが、その経過や結果はさらに複雑になるはずで、予想は困難である。現在の北朝鮮は、表面的には安定しているように見える。しかし、金正恩体制の内部は決して安定しておらず、いつ北朝鮮が崩壊しても不思議ではない。
※惠谷治著/『北朝鮮はどんなふうに崩壊するのか』より