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広島死体遺棄事件後のLINEを批判する論調はなぜ生まれたのか

 7月13日、広島で16歳の少女が同級生に殺害されるという事件が発覚し世間を騒がせた。とくに衝撃を与えたのは、犯行に及んだ16歳少女が語った「LINEに悪口を書き込まれたから」という殺害動機だ。

 この事件を筆頭に、中高生のいじめ問題や出会い系利用など、無料通話アプリLINEが多くの事件報道に登場するようになった。一部のマスコミやニュース上では「LINEが社会問題の温床になっている」という論調もみられる。こうした状況を受け、LINEの運営元は、18歳以下にID検索制限を設けるなど、トラブルを未然に防ぐための対策を講じている。

 しかし、こうしたサービスを非難する風潮に対して、大学院でウェブサービスについて研究している男性A氏(24歳)は次のように疑問を投げかける。

「新しいメディアが登場すると、どこにでもそれを非難する人があらわれます。それを使っている人間ではなく、そのサービスやツールが悪いという発想に向かいがちです。

 ここ数年登場したサービスの中で、一番象徴的なものがLINEです。FacebookやTwitterが比較的オープンなウェブサービスとしてもてはやされ、実名利用だから安心、健全という発想をもつ人も多かった。そこで批判が生まれる場合、“リア充アピール問題”や、自分を実物よりも良くみせようとする“盛りガール”などの揶揄、それから“いいね!”に過敏になるような、“ソーシャル疲れ”などといった形で、ユーザーに向かうケースが多い。

 一方でLINEや同じ無料通話アプリのカカオトークは、クローズドなウェブサービスです。そうすると、“目に見えなさ”や“不透明さ”が、安直に“危険”で“いじめの温床”などという指摘に結びつきやすい。外から見えない閉鎖的なサービスは、そこで繰り広げられる人の営みではなく、サービス自体が批判の対象になりやすい傾向がありますね」

 サービスの性質がオープンか、クローズドであるかが、批判がユーザーに向かうか、サービスそのものに向かうかを分けている、という指摘だ。A氏は続ける。

「そして、あたかもそのサービスが“いじめ”や“事件”を生んだ、というような論調が登場し、“サービス自体を無くせば問題が収束する”という安易な発想に至りやすい。特に若者が中心的な利用層であるサービスは、こういう批判を受けがちです。

 しかしこういう論調は、すでに過去に『ウォークマン有害論』や『ケータイ有害論』、『掲示板有害論』など、すでに反復されたものですね。重要なのは、ユーザーの側の姿勢でしょう。リテラシーの高い低いの問題だけではなく、ユーザー自身がいかに信頼できる人間関係を作れているのか、という当たり前の問題に目が向けられるべきです」(同前)

 結局は、ユーザーがどう使いこなすかが鍵、というわけだ。ツールが悪いのではなく、愚かな行為をする人間が悪いのである。

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