安倍首相の靖国神社参拝をめぐって歴史問題をてこにした中国、韓国からの牽制がますます強くなっている。アメリカを巻き込んだ中韓の対日攻勢についてジャーナリストの櫻井よしこ氏が解説する。
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歴史問題の構図はこれまでは「日本対中国・韓国」でした。しかし、橋下徹氏の慰安婦発言は波紋を呼びました。無論、橋下発言だけが原因ではありませんが、現実を見ると、歴史問題については「日本対米中韓」の構図ができつつあるのも確かです。日本が世界で孤立しかねない状況が、確かにあるのです。
アメリカ国務省は在日米軍に風俗の活用を勧めた橋下氏の発言を受けて「言語道断で侮辱的」と述べ、強い拒否反応を示しました。シーファー元駐日大使も記者会見で、靖国参拝については一定の理解を示しましたが、慰安婦問題については「いかなる正当化もできない」と厳しく批判しました。
アメリカの世論が中国・韓国の側に立ち、日本を責める状況が生まれているのです。
歴史問題はいうまでもなく中韓が仕掛けている対日闘争ですが、両国は日本の同盟国であるアメリカに影響を及ぼすべく、執拗かつ巧妙に働きかけてきました。
中国は2010年7月に中国版CNNともいえる国営新華社通信運営の「CNCワールド」という国際放送を開始し、24時間、365日休むことなく中国の立場に立ったメッセージを発信し続けています。CNCはニューヨークのタイムズスクエアに大きなスタジオを構え、引き抜いてきた有能なアメリカ人キャスターに、流暢な英語で中国の視点に立った情報などを伝えさせています。
CNCでの放送に加えて中国はまた、アメリカを中心とする海外のシンクタンクや大学、研究者、シンポジウムなどに巨額の寄付をし、識者や政治家、マスコミなど、さまざまなレベルに働きかけ、日本がいかに卑劣な国であるかを伝え続けています。世界中に増え続けている中国語教育機関である孔子学院も、そうした情報戦略の一環です。中国政府が毎年費やす対外広報予算はなんと、9000億円を超えます。
こうして中国の視点に基づいた情報が、継続的かつ大量にアメリカに注入されてきた結果、中国の主張がアメリカの識者や指導層にまで浸透し、ボディブローのように効き始めているのではないでしょうか。それが「日本対米中韓」へと構図が変化した一因であることは間違いありません。
※週刊ポスト2013年8月16・23日号