現在、安倍政権の社会保障改革に疑惑の目を向けているのが、自民党の圧倒的勝利の功労者である公明党と支持母体の創価学会だ。
8月上旬にまとめられる政府の社会保障制度改革国民会議の最終報告書の素案には、「税や社会保険料の負担増は避けられない」「自助努力を支えることにより、公的制度へ依存を減らす」などと盛り込まれ、国民負担を増やしながら福祉を切り捨てていく方向性が打ち出されようとしている。生活保護費の給付カットや介護保険制度の改悪(※注)などがまさにそうだ。東京の下町を地盤に持つ公明党の地方議員がいう。
「うちの選挙区は生活保護受給者が多い。現場では自助といわれてもできない人が大勢いる。1か月6万円くらいの年金で生活保護を受けずに頑張っている人だって、国民健康保険料などの値上げに苦しんでいる。そうした現実を見ると自助強化を強調する安倍首相の考え方は受け入れがたい」
介護保険制度の改革でも、公明党と安倍政権の方向性は正反対だ。公明党は高齢者が重度な要介護状態になっても住み慣れた地域で介護サービスを受けることができる「地域包括ケアシステム」の構築を公約に掲げたが、官邸の産業競争力会議では、都市部の高齢者を地方の施設に移すという「現代の姥捨山」政策が議論されている。
「お年寄りを地方の過疎地に移そうというのは時代に逆行する隔離政策です。地方のビジネスにしようという経済優先の発想でしょうが、もし、自民党が弱者切り捨てに動くならわれわれが支持者の方々に対する責任を問われます」(別の公明党地方議員)
公明党は、安倍首相が憲法改正だけでなく、社会保障でも公明党切りに動こうとしていることを敏感に感じ取っているのだ。
【※注】介護保険の財政が悪化したため、「要支援」と認定された介護状態の軽い高齢者を介護保険の給付対象から除外し、市町村に支援を負担させようとする案が検討されている。そもそも「要支援」の区分は、介護保険導入の際に利用者が少なく制度の必要性が問われたことから厚労省が対象者を増やすために作った仕組みであるにもかかわらず、その負担を地方行政に押しつけようとしている。
※週刊ポスト2013年8月16・23日号