安倍晋三首相の靖国神社参拝をめぐって中国、韓国が盛んに日本を牽制しているが、国内にも安倍首相の足を引っ張ろうとする勢力が存在する。自国を守るために戦死した先人の霊を悼む行為は国家指導者にとって万国共通の責務であるはずだが、なぜ首相の靖国参拝はかくも“政治問題”となってしまったのか。ジャーナリストの櫻井よしこ氏が解説する。
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安倍首相の靖国参拝について大きな問題は安倍首相を取り囲む人たちです。例えば元ベテラン外交官らは首相に忠告します。安倍政権の課題は日米同盟の強化であり、そのためには防衛費の顕著な増額や集団的自衛権の行使に踏み込むことが重要ではあるが、靖国参拝などの歴史問題は国際問題を引き起こすためにしてはならない、慰安婦についても憲法改正についても触れないほうがよいと首相に“アドバイス”しています。
さらに首相の足を引っ張るのが国内メディアです。4月21日、首相が春の例大祭で靖国神社に真榊を奉納し、麻生太郎副総理ら安倍内閣の閣僚3人と超党派の国会議員168人が参拝すると、中韓両国のみならず、日本の一部メディアが活発な批判を展開しました。
歴史問題、とりわけ慰安婦について国益を損ねる報道を繰り返してきたのは、他ならぬ朝日新聞ではないでしょうか。朝日の社説子も、論説委員諸氏も記者の方々も、よくよく胸に手を当てて省みてほしいと思います。
たとえば今年5月、読売新聞は複数回、慰安婦報道における朝日新聞の責任に言及しました。そのうちのひとつが5月14日付朝刊です。「従軍慰安婦問題」と題した用語解説記事のなかで、朝日新聞の誤報を名指しで指摘しました。
〈1992年1月に朝日新聞が『日本軍が慰安所の設置や、従軍慰安婦の募集を監督、統制していた』と報じたことが発端となり、日韓間の外交問題に発展した。記事中には『主として朝鮮人女性を挺身隊の名で強制連行した』などと、戦時勤労動員制度の『女子挺身隊』を“慰安婦狩り”と誤って報じた部分もあり、強制連行の有無が最大の争点となった〉
しかし、朝日新聞は現在もなお誤報を訂正していません。それどころか、誤った認識を持つ韓国の側に立ち、日本政府の対応を批判し続けているのです。
靖国参拝についても、中国・韓国の反発を買うと言って批判しますが、報道機関であるならば、そもそも中国や韓国が靖国参拝に口をはさむ正当性がどこにあるのかをきちんと分析し、報じるべきです。そして靖国参拝が摩擦の原因となると言うのであれば、中国・韓国による歴史捏造をこそ正し、摩擦の原因を取り除くための知的努力をすべきです。
朝日に限らず日本のメディアは、「閣僚が何人参拝した」などと報じます。靖国参拝が悪いことでもあるかのような報じ方です。そうした奇妙で、浅薄で、明らかに間違った報道をするメディアに対しても、私たち国民は批判の声を挙げたいものです。
※週刊ポスト2013年8月16・23日号