就活難が続くなか、学生はさまざまな戦略を練って職探しに奔走している。大手企業の人気は根強いものの、ベンチャー企業や社会起業家を志望する学生も目立つようになった。そんな中、農業協同組合、つまり「農協(JA)」主催のイベントに、就職希望の学生たちの参加が急増しているという。
とはいえ、同イベントスタッフの女性(38)によると、大半のケースで学生側のニーズと農協の組織形態とは相容れないようだ。
「イベントに参加する学生の方は、積極的にスタッフにも相談しにくることが多いですが、そのほとんどが、『農協に就職したい』という相談。ところが、よくよく話を聴くと、『農協には就職したいけれど、農業はやりたくない』、『田舎では生活したくない』という声が多い。
なぜ農業をやりたくないのに農協に入ろうと考えるのか、その理由を聞くと、『ここなら就職口がありそうだから』と本音を漏らします。組織のことを知りもしないで、どこでも良いから働き口が欲しいという気持ちが先走るのでしょうね」
農協だけではなく、地方への移住相談を行なっているNPOスタッフの男性(40)も就職活動中の学生に遭遇することが増えたと話す。
「もともとは団塊の世代などの退職者が移住相談に来ることが多かったのですが、震災以降は幼い子どもがいる女性の移住希望者が増えています。同じく、大学生も含めて、若者層の移住相談者も目立つようになりました。
ところが、移住相談と一緒に増えているのが『自分が地方都市をデザイン、プロデュースしたい』、『地域活性化に関わるベンチャーを立ち上げたい』、『地方でビジネスの力試しをしたい』というような学生です。なかには、突然やってきてパワーポイントで企画書を見せる学生もいます。
話をしてみると、『東京から出る気はないので移住はしたくない』、『東京で企画をしたい』という意見も多く、正直呆れています」
とにかく働き口を見つけたい、という学生たちの気持ちはわからないでもないが、気持ちばかりが空回りしている例も少なくないようだ。