いま、ビーチと名がつくスポーツが、その種類を増やしている。
一般的にビーチのスポーツといえば、五輪種目の「ビーチバレー」が真っ先に思い浮かぶだろう。この夏も全国各地の砂浜にバレーコートが設置され、初心者からトップ選手まで多くの人が取り組んでいる。8月16日からはビーチバレージャパンが藤沢市鵠沼海岸で、8月22日からは大阪のせんなん里海公演でビーチバレージャパンレディースが開催されるが、”見る”スポーツとしても注目度が高い。
この注目度の高さを、近年、集客に悩む全国の海水浴場が放っておくはずがない。
「2011年の東日本大震災のダメージもあわさって、海水浴客の減少傾向に歯止めがきかないんです。砂浜がキレイで楽しく泳げるとか、サーフィンやヨットを楽しめるというだけでは新しいお客さんが見込めない。海水に入らない別の楽しみ方もあれば、今までとは違う興味で足を運んでくれる人が増えるのではないかと期待しています」(北関東の観光協会関係者)
夏休みといえば、家族そろって海水浴。またはカップルでも海へ遊びに行くのが定番だったのは昔のこと。海はプールと違って入った後にベタベタすると子どもが嫌がるなど、敬遠する人が増えてきた。来場者の減少に悩む海水浴場が、新しい集客の目玉として飛びついたのだ。そのため、全国各地の海岸にはビーチバレーコートを設置する砂浜が増え、ビーチバレーに限らず、多種多様なビーチスポーツが行われている。
海開きの前、5月のゴールデンウィークにお台場で開催されたイベント「ビーチライフ」をみると、ビーチフラッグス、ビーチ相撲、ビーチテニス、ビーチリトミック、ビーチウォーキング、ビーチヨガ、ビーチバレー、ビーチ新体操と”ビーチ”が目白押しだ。これらはイベントのための特別なビーチスポーツではない。海開きが過ぎてから、全国の海水浴場と隣接した公園でも同様にさまざまなビーチ○○が開催されている。
イベントの一環としてビーチヨガが行われている場所は、数え上げるのが難しいほど。横浜市のビーチスポーツフェスタでは、ビーチハンドボール、ビーチテニス、ビーチサッカーにビーチバレーが行われ、8月の千葉県富津市ではビーチ相撲が開催された。茨城県大洗町ではビーチレスリングの全日本選手権大会が行われた。どの大会やイベントにも特徴的なのは、当日になっていきなり参加できる敷居の低さだ。
「マイナースポーツにとって、子どもの数が減るばかりの今は、競技の将来のために裾野を広げるか、能力が高いエリートだけを養成するかの二択。もともと貴族のスポーツで、装備も特殊なフェンシングのような競技は後者の方法をとっていますが、ほとんどは取り組む人数を増やしたいと悩んでいます」(JOC関係者)
来場者減少に悩む海水浴場を抱える地元と、競技団体の思惑が一致した結果、全国でビーチ○○大会が花盛りとなっているのだ。
全日本選手権と銘打っていた茨城県大洗町でのビーチレスリングも、大会当日にエントリーが可能で、計量もなく体重は自己申告だった。ずいぶんとおおらかな全国大会だが、もし大会で優秀な成績を収めたら、五輪のマークがついたJAPANジャージを着て日本代表選手団に加われる可能性がある。
2年に一度、アジアオリンピック評議会が開催する「アジアビーチゲームス」という大会がある。次回は2014年、タイのプーケット島で開催される。その実施競技にビーチレスリングがあるのだ。他のビーチ○○競技を挙げると、ビーチ水球、ビーチサッカー、ビーチハンドボール、ビーチカバティ、ビーチセパタクロー、ビーチバレーと、どんな形のスポーツなのか想像がつきづらい。だが、見るのも取り組むのも、どれも楽しそうだ。
ビーチでの各種スポーツは、海水浴客離れを防ぐ特効薬になるだろうか。