中国の情勢に詳しいジャーナリスト・富坂聰氏が、迫り来る危機について指摘する。
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今春、中国・江蘇省など南東部を中心に猛威を振るったH7N9型鳥インフルエンザウイルス。多数の死者も出したこの問題で、今月、一部の患者においては「人から人への感染」、いわゆる「人―人感染」であったことが治療に当たった江蘇省疾病予防センターによって正式に発表された。
鳥インフルエンザウイルスは家禽類との接触で感染するとされてきたが、万一人から人への感染ということになると一気に被害が拡大すると予測されている。それだけに感染が一段落した夏場になっても感染の内容に強い関心が寄せられてきたのだった。そして結果は「一定の条件の下で」という説明がともなうものの「黒」となったようだ。
今回江蘇省疾病予防センターが発表したのは無錫市在住の家族で家禽類から感染した父を看病した娘にも感染したケースだったが、これは今年4月に国家衛生計画委員会が公表した研究結果とも合致する。また上海市公共衛生臨床センターも同様に、上海で確認された家族間における感染事例で、家禽類と接触がない家族の感染も確認されたとして「一部で人から人への感染が起きていた」としていたのである。
すでに爆発的な感染の入り口に立ったということなのだろうか。いずれせよ来春はこの問題から目が離せなくなるはずだ。