今年6月、厚生労働省の調査で、65才以上の高齢者のうち、認知症患者が推計約462万人に達することがわかった。さらに認知症の前段階とされる軽度認知障害(MCI)は推計約400万人に達した。この“予備軍”を合わせると、認知症リスクを抱える人は862万人に達する。
そんな中、認知症対策に必要不可欠なのが、歩くことだ。国立長寿医療研究センターの鈴木隆雄所長はこう語る。
「足には筋肉と血管が詰まっていて、“第二の心臓”と呼ばれ、歩くと筋肉が収縮拡張して血流量が増します。
1日の歩数が6000歩以下の人と1万歩以上の人は8年後、脳の萎縮割合が3割異なるという研究もあります。毎日、できるだけたくさん歩くことを心がけましょう」
歩くスピードも大切な要素という。
「認知機能の低下と歩行機能の低下は密接に関係しているといわれています。速く歩ける体の状態を保てることが良いと考えられるので、地面をしっかり蹴ってできるだけ歩幅を広げ速く歩くように心がけましょう」(同センターの土井剛彦研究員)
実際、東京都健康長寿医療センターが歩幅を「広い」 「普通」「狭い」の3群に分けて行った調査によると、歩幅が狭い群は広い群に比べて、認知機能が低下するリスクが3.4倍も高いことがわかっている。
良質な睡眠もまた、認知症対策には重要だ。高齢になると、夜中に目が覚めてしまうなど、眠りが浅くなりがちだが、実は「1時間以上の昼寝」をしている人が多いというデータがある。
ある研究によると、「1日30分の昼寝」をしている人は、していない人に比べてアルツハイマー型認知症の発症リスクが5分の1に低下する。逆に、「1時間以上の昼寝」をしている人は認知症の傾向があったことがわかっている。
さらに最新の研究では、短時間化がさらに進んでいるという。同センターの鳥羽研二病院長が言う。
「最も新しい論文では、15分以内の昼寝が認知症予防に効果があるとされます。長すぎる昼寝ではなく、1日30分以内にすべきでしょうね」
認知症予防はMCIだけのものではない。正常な人もできるだけ早くから生活習慣改善を意識することが大切だ。
鈴木所長は、認知機能が衰える最大のリスクは「頭脳歴」であると強調し、日頃から頭を使うことの大切さを訴える。
「日常生活で本を読んだりモノを考えるなど、頭を使う習慣が大切です。今は何でもスマホで簡単にできる時代ですが、女性が苦手とされている『地図を読む』ことや、『時刻表を使って旅行の計画を立てる』など、普段からなるべくITを頼らず、意識的に頭を使うようにしましょう」(鈴木所長)
※女性セブン2013年8月22・29日号