甲子園で高校野球が続いている。しかし四万十川で40度越えを記録するような猛暑の中でプレーをすることに、疑問視する声もネットにある。熱中症対策はどうなっているのか、取材した。(取材・文=フリー・ライター神田憲行)
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ネットで甲子園で野球をすることを疑問視する「根拠」となっているのが、日本体育協会がまとめた「熱中症予防ガイドライン」のなかにある「熱中症予防のための運動指針」だ。そこには〈乾球温度35度以上 運動は原則禁止〉という趣旨のことが書いてある。甲子園ではもちろん気温35度を超える。日体協のガイドラインに反する行為ではないか。日体協総務部広報課によると、
「このガイドラインは指針ということで、なにもこれに絶対に従わなくてはいけない、ということではありません。あくまで参考としていだたければということです」
という。同協会のスポーツ科学研究室では「熱中症対策は、各スポーツの競技・運動特性によって異なってきます」と前置きして、
「熱中症の危険性があるのは、炎天下で長時間、のべつくまなくずっと身体を動かしているような競技です。野球では投手以外は守っていてもずっと身体を動かしているわけではなく、攻撃時にはベンチの中にいます。だから我々の調査でも、甲子園のような『(試合の)大会』では、熱中症は起きにくいと考えられているんです。野球で注意すべきなのは、むしろ練習時ですね」
同研究室は高校野球連盟の医科学委員会と連携して、10年以上、野球の熱中症予防の研究をしてきたという。
では実際の甲子園では具体的にどのような熱中症対策が取られているのだろうか。高野連広報担当者によると、
「まず試合前、試合中、試合後の給水を呼びかけて、ミネラル・ウォーターやスポーツ・ドリンクを大きなボトルで各出場校に提供しています。無くなれば補給します」
試合中、ネクストサークルに向かう打者が控えの選手からコップ一杯の水を差し出されて、グイッと一杯引っかけるように飲んでから出て行く姿を試合中継で見たことがある人もいるだろう。あれが「給水」活動だ。さらに、「試合中はベンチの背面の壁とイスの間に設置してあるクーラーから冷風を出しています」。
なんと甲子園のベンチにはクーラーがかかっているのだ。ある投手は「ベンチに戻ってくるとクーラーの風を扇風機で送って身体に当てています。水は守りから戻ってきたときと、守りに行くときとコップ一杯ずつ飲んでいます」。
熱さで選手が倒れるようなシーンは誰も見たくない。身体に十分注意して、プレーして欲しい。