黒田勝弘氏は1941年生まれの産経新聞ソウル駐在特別記者。著者に『韓国人の歴史観』(文春新書)、『ソウル発 これが韓国主義』(阪急コミュニケーションズ刊)がある。黒田氏が韓国国内の動きについてリポートする。
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このところ韓中は、北朝鮮を国際舞台に引き出すための「改革・開放プレッシャー」を与え続けているが、これに金正恩はどう出るのか。
中国が圧力を加えようとすれば、歴史的に見て、北朝鮮は「孤立回避」のため必ず中国以外の勢力に色目を使い始める。不安からバランスを取ろうとするのだ。
このところ目につく米国や日本、そして韓国への対話攻勢がそうだ。北朝鮮としては中国を牽制し、中国に対し自らの価値を上げたい。先の「飯島勲内閣官房参与訪朝受け入れ」という対日接近も、北朝鮮の不安心理の表われとみていい。
相手の弱みにつけ込むという意味で、日本としてはこの状況を利用しない手はない。
その場合、どうつけ込むか。小泉政権時代に日朝首脳会談で拉致問題に一定の成果を得たのは、当時、経済困窮という弱みを抱えた金正日が、日朝国交正常化による日本からの経済支援をあてにして、焦ったからだ。
あの時は結果的に金正日の読み違いで、日本に人質を奪い返された上に日本国民の反北朝鮮感情を高めるだけに終わった。北朝鮮にとっては痛い教訓になったに違いないが、逆に日本としてはこの経験を念頭に平壌につけ込む余地が十分ある。
韓中が接近したからといって「日本外し」などといじける必要はない。「それなら日本は北朝鮮を取り込むか」くらいの発想があっていい。韓国の対中接近でも分かるようにこの地の民族は“力”に弱い。参院選の結果、力をつけた安倍政権なら北朝鮮を取り込めるかもしれない。
※SAPIO2013年9月号