放送開始以来、徐々に視聴率を上げるTBS日曜劇場『半沢直樹』。メガバンク銀行員を主人公にした同ドラマは、前半のクライマックスを迎える8月12日放送の第5話で視聴率29%をマークするなど、もはや『半沢直樹現象』ともいえる状況を巻き起こしている。
人気は日本国内ばかりではなく、中国大陸にも飛び火している。かの国では日本の人気ドラマのほとんどがインターネットの動画サイトにアップされており、中国語字幕つきで無料で見ることができるのだ。
なかには日本の放送時間に合わせて「生中継」で閲覧できるサイトまで現れている。もちろん『半沢直樹』も例外ではない。だがいうまでもなく、これらは著作権を無視した“違法行為”である。
視聴手段はさておき、『半沢直樹』は中国人からも注目されている。物語が進むたびに多くのニュースサイトが報じ、主人公の決めゼリフ「やられたらやり返す、倍返しだ」は、中国語で「人若犯我、必然加倍奉還」などと訳され、現地でも広まりつつあるという。
中国サイトの掲示板でも『半沢直樹』に関する多くの書き込みが。「半沢グッズのキーホルダーがどうしても欲しい。どこで買える?」という悲痛な叫びや、「銀行員なのに、なんで工場に出向させられるの?」という素朴な質問、キャストの演技への論評などの幅広い意見が寄せられている。
演技についてはおおむね好評で、第5話で失脚して泣き崩れる浅野支店長や、半沢に「夫をよろしくお願いします」と頼み込む浅野夫人の演技への高い評価が目立つ。だが中には、悪徳社長の愛人役で登場する壇蜜を指して「日本AV女王」と記載するものもあった。
少なからずこのような誤りもあるが、同ドラマが中国大陸で絶大なる支持を受けていることは間違いない。なぜここまで中国人に受けるのか。
『中国人の取扱説明書』(日本文芸社刊)の著書があるジャーナリストの中田秀太郎氏は、中国の銀行員事情についてこう解説する。
「商都である上海では金融系を志す学生の多くが会計事務所を第一志望とし、銀行は滑り止めといった位置づけ。だから中国の銀行員は、日本におけるそれほどはエリートだとみなされていません。安定はしているけれども給料はそれほど高くなく、若手だと月給5000元(約8万円)程度のようです」
「銀行員」の社会的地位には日中でギャップはあるようだが、ドラマの中身にこそ人気の秘密があると中田氏は続ける。
「中国では、このドラマに登場する名言『部下の手柄は上司のもの、上司の失敗は部下の責任』を地でいく責任転嫁が日常茶飯事です。素晴らしい機転で悪い上司に次々復讐していく半沢の姿は、日常的にそんな上司の脅威に晒される中国人サラリーマンにとってもスカッとする物語に映るはずです」
8月25日から始まる第2部を、海の向こうでも多くのファンが待ち焦がれている。