ビジネス

就活表す漢字1位は「楽」だが学生格差は顕著に拡大と専門家

 就活生にアンケートを採った就活を表す漢字とテーマ曲が発表された。ともに意外な(?)選出だ。作家で人材コンサルタントの常見陽平氏が分析する。

 * * *
 株式会社マイナビが8月12日に発表した「2014年卒 マイナビ学生就職モニター調査 7月の活動状況」が話題になりました。恒例企画の就活を表す「今年の漢字」、そして今年から始まった「就職活動のテーマ曲」が発表されました。新聞各紙の他、ヤフートピックスにも掲載されました。

 肝心の中身ですが、就活を表す「今年の漢字」は1位が「楽」(得票率7.2%)、そして「就職活動のテーマ曲」1位はZARDの「負けないで」(得票率3.6%)でした。と、ここまでは新聞各紙でも報じられた通りですが、この内容、細かく見ていくとなかなか面白いです。

 まず、「楽」ですが、実はベスト3位内には10年連続でベスト3以内に入っているのですね。90年代からの就職氷河期が終わったと言われたのは06年卒あたりなのですが、その前の05年卒から09年卒までは5年連続で1位になっています。最近でも、まだまだ就職が厳しいと言われた12年卒でも1位は楽になっています。ただ、今年は2位の「苦」(5.4%)を1.8ポイント離して1位になっています。2位と1.5ポイント以上差をつけて「楽」が1位になるのは09年卒以来です。

 もっとも、ここでは文理の差があり、理系は男女とも「楽」が1位で、理系男子では得票率が9.5%にも達しており、2位の「苦」の4.6%を4.9ポイント上回っています。理系女子においては「楽」の得票率が6.3%で理系男子よりは低いものの、やはり2位の「苦」の3.6%を2.7ポイント上回っています。実際、ここ数年も製造業の求人に変動があったものの、理系は就活に有利と言われており、特に機械・電気・情報系の優秀層は争奪戦になっていました。

 実際、内定率などは回復傾向ではあります。リクルートキャリアが7月31日に発表した『大学生の就職内定状況調査(2014年卒)』の7月1日時点でのデータによると、就職志望者のうち、大学生全体の就職内定率は65.0%で、前年同月の58.5%に比べて6.5ポイント高いという結果が出ています。文理別では、文系62.1%、理系71.5%、男女別では、男性66.7%、女性62.9%でした。

 今年の社会人1年目の段階で既に回復傾向は顕著でした。文部科学省の『学校基本調査-平成25年度(速報)』によると、平成25年卒の就職率(ここでは卒業生に占める就職者の率)は67.3%で、昨年に対して3.4ポイント回復。就職者も375,861人で、昨年よりも18,850人増加しております。

 大学関係者の声を聞いていても、中堅私大を中心に「明らかに回復傾向」「ここ数年、内定者が出ていない有名企業から内定が出ている」などの声が聞えてきます。

 なお、この手の「景気がよくなってる話」をすると、なんでも「アベノミクスのおかげだ」という話になるわけですが、政権が交代する前から回復傾向はみられていたこともお伝えしておきましょう。

 今年から発表が始まった「あなたの就職活動のテーマ曲は?」ですが、結果は次のようになっています。

1位「負けないで」ZARD(1993年) 得票率: 3.6%
2位「終わりなき旅」Mr.Children(1998年) 得票率: 2.3%
3位「ファイト!」中島みゆき(1983年) 得票率: 1.9%
4位「栄光の架け橋」ゆず(2004年) 得票率: 1.3%
5位「ファイトソング」嵐(2007年) 得票率: 1.0%
6位「Brave」ナオト・インティライミ(2011年) 得票率: 0.7%
6位「サクラ咲ケ」嵐(2005年) 得票率: 0.7%
8位「fight」YUI(2012年) 得票率: 0.6%
8位「ultra soul」B’z(2001年) 得票率: 0.6%
※(曲の発表年は常見が追記)

 2014年卒の就活生(現在の4年生)は、現役合格の場合、91年か92年生まれです。1位のZARD「負けないで」は2、3歳の時に流行った曲ということになりますが。普遍的な応援ソングがランクインしていると言えます。ベストテン中、彼ら彼女たちが大学生の時に流行った曲はナオト・インティライミの「Brave」(2011年) 、YUIの「fight」(2012年)くらいですね。ここ数年、「日本のヒットチャートはAKB48と嵐だけだ」と揶揄する声がありましたが、AKB48は入っていませんね。自己啓発ソング、多いのですけどね。嵐は見事に2曲、ランクインです。CDが売れない時代と言われますが、それでも今よりは売れていた90年代や00年代後半の曲が多いのも特徴ですね。
 
 ここからは私の考察ですが・・・。就活と、日本の音楽シーンの特徴がよく出ているなと感じた次第であります。

 就活を表す漢字で「楽」が1位になったのは、求人数やそれによる内定率の回復というのもありますが、そもそもの就活の本質を表しているともいえます。たしかに、大変ですし、理不尽なこともあるわけですが、やれば楽しいわけです。

 ただ、実はこのランキング、2位が「苦」(5.4%)、3位が「耐」(3.0%)、4位が「迷」(2.9%)、7位が「疲」(2.6%)、8位が「難」(2.2%)と、ベストテン内に苦しい、大変系の漢字が5つ入っています。上手くいく層とそうでない層、楽しめる層とそうではない層の就活格差が顕著ですね。

 就活のテーマ曲ですが、そもそも最近の曲で、誰もが元気が出る応援歌というものが存在しないのではないか、いや届いていないのではないかと感じました。結果として、昔からの定番ばかりになっていますね。こんな時代を励ます歌を激しく希望します。

関連キーワード

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン