広島県呉市で16歳の少女が殺害され、元同級生の少女ら7人が逮捕された事件では、グループの一部が「援デリ(援助交際デリバリー)」でカネを稼いでいたと報じられた。未成年の少女が性を売り、月に100万円単位のカネを手にしたという「援デリ」とは何か。ルポライター・鈴木大介氏が迫る。
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組織売春の中でも最もアンダーグラウンドなものが「未成年援デリ」だ。
そもそも「援デリ」とは、2006年頃から始まった組織売春の新業態のこと。「打ち子」と呼ばれる管理スタッフが、個人で援交している女性を装って出会い系サイトに男を募集する書き込みをし、会う約束を取り付けて待ち合わせ場所に配下の女性を派遣する。
個人的に売春する女性に「客付け(買春する男を見つけてくる)」「ケツ持ち(トラブル処理)」として業者がつくスタイルで、所属女性は数名といった零細規模のものがほとんどだ。携帯と女性さえ揃えば始められる業態のため急速に広がり、昨今では買う男に対して業者数が飽和しているくらいだ。未成年の少女に売春させる時点で当然風俗営業法に基づく届け出などしていない違法な業態である。
都内で風俗業を営むTは、周囲で未成年の少女を使う援デリ業者は一時期に比べだいぶ減少していると語った。
「成人を使った援デリで業者側が逮捕されても初犯は罰金のケースが多いけど、未成年を使った場合はほぼ一発実刑。あと最近の客は『体が大人っぽくなった』時点で“少女プレミア”をつけない。16~17歳で大人びた容姿の子なら、都内で頑張っても別3(ホテル代別3万円)がせいぜい。これが『中学生に見える20歳』だと別5ぐらいになるから、そっちを使ったほうが全然いいという話になる」(T)
●鈴木大介(すずき・だいすけ):「犯罪をする側の論理」をテーマに、裏社会・触法少年少女らの生きる現場を中心に取材活動を続けるルポライター。著書に6年半にわたる少女売春の現場取材をまとめた『援デリの少女たち』(宝島社刊)などがある。
※SAPIO2013年9月号