夫婦の日常も様々だが、あらゆる夫婦のエピソードが、漫談家の綾小路きみまろにメールや手紙で続々と寄せられている。今回寄せられたのは、音響メーカー勤務のご主人(40歳)。奥様(37歳)とは結婚10周年、錫婚式です。
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妻は霊的な迷信を信じています。「霊の通り道になるから」と、鏡と鏡は絶対に向かい合わせにはしませんし、使わない時は「よくない物が映り込んでしまうから」と必ず布で覆います。霊柩車が通ると必ず親指を隠し、「北枕は良くない」という迷信も信じています。
でも、我が家は賃貸マンション。寝室の窓は南側で、外は交通量の多い道路です。妻が望むように南向きに寝ると、寝付きのいい妻はいいですけど、僕は車の音がうるさくて寝付けません。それで布団をふたつ並べ、妻は南向き、僕は北向きで寝るようになりました。
ところがこの春、妻が満面の笑みで、「テレビでやってたの。風水では北枕は金運や運気が上がるんだって。今夜からひとつの布団で北向きに寝ましょう!」。今までは何だったんだよ!と思いましたが、僕に異存はありません。
ただ、「夫婦の運気も上げるために手をつないで寝ましょうよ」には閉口。寝返りも打てないし……。それで、「おふくろから聞いた迷信で『夫婦が手をつないで寝ると病気になる』らしいよ」といって、やっと納得してもらいました。
ああ、それが……。久しぶりに我が家に来たおふくろに「親父と仲良くやってる?」と聞くと「ラブラブよ。今でもお父さんと手をつないで寝てるんだから」。妻の僕への鋭い視線。シャラップ、マイ、マザー!
※週刊ポスト2013年8月30日号