安倍晋三首相は11日間におよぶ長期の夏休みの多くを山梨県河口湖畔にある別荘で過ごした。そこは祖父である岸信介・元首相の時代から使っているというログハウス風の建物だ。
過去の歴史を振り返れば、政治家と別荘には「政局」が付きまとってきた。たとえば中曽根康弘氏は首相退任直前に、奥多摩の「日の出山荘」に後継候補といわれた竹下登、安倍晋太郎、宮沢喜一の3氏を呼びつけ、政権構想を問い質した(その後、竹下氏を後継指名)。
最近では、鳩山由紀夫・元首相が軽井沢の別荘に小沢一郎氏を招き、党内政局に利用したことが記憶に新しい。
ところが、この安倍氏の別荘には、麻生太郎・副総理や石破茂・幹事長など、政権を支える大物政治家の顔は見えない。来るのは、近所に別荘があるという本田悦朗・内閣官房参与のほか、気心の知れた秘書官や友人ばかりである。実際に別荘を訪れた経験者のひとりは語る。
「別荘に呼ぶメンツは、首相よりも昭恵さんの意向が大きいのでは? ゴルフに加えて、昭恵さんはワインも好きなので、彼女が気兼ねなく一緒に飲める人でないと別荘には呼ばれません。とくに別荘に泊まるとなれば、安倍夫妻のベッドルームのすぐそばで寝起きし、朝食なども共にするわけですから。ブレーンや側近といわれる人の中でも、別荘に呼ばれるのは夫妻が心を許した一部に限られる」
バーベキューや朝食のハムエッグ、サラダなど、昭恵夫人の“手料理”を食べられるのが別荘宿泊者の特権だが、実は本当のプレミアムは“ゴッドマザー”こと母・洋子さんと同席できることだという。
「別荘の別棟には洋子さんと、洋子さんの旧友である父・晋太郎さん時代からの秘書夫人などが滞在します。彼女たちと食事で同席することが、側近たちが安倍首相に“本当に認められた証”になる。洋子さんに『晋三をよろしくお願いします』と酒を注がれることは、宿泊者にとって大変価値ある“儀式”です」(同前)
この別荘こそ、安倍家の「奥の院」だったのだ。
※週刊ポスト2013年8月30日号