中国の習近平・国家主席の女性遍歴を詳細に記した暴露本が7月下旬に香港で出版される予定だったが、出版社に対して中国当局から圧力がかかり、出版のメドが立たない状態になっているという。香港の出版関係者が明らかにした。
この書籍は『習近平情史大全』というタイトルで、中国情報専門サイトを運営する「博訊(ボシュン)」の関連会社である博訊出版社から発行される予定だった。同社は7月19日付で、同書が「1週間以内に香港で発売」と予告記事を流していたが、1か月以上経過した8月下旬になっても、まだ発行されていない。
予告記事によると、同書の内容は習氏が16歳のときに北京から片田舎の陝西省の農村に下放された際の恋愛の物語や、その後北京に戻り、清華大学在学中に恋に落ちた女性のこと、さらに初婚の相手が父親の習仲勲(元副首相)の部下だった外交官の一人娘だったが、後に離婚したこと。さらに、福建省廈門市副市長時代に、当時の人気歌手で現在の妻の彭麗媛さんと再婚したものの、すれ違い生活が長く、福建省幹部時代の習氏はさまざまな女性と浮き名を流したことなどが詳しく書かれている。
このような中国の最高指導者のプライベートな部分についての記述が多いことから、ある中国書籍専門店が客の注文を受けて同書を取り寄せようと、香港の取次店から博訊出版社に連絡をしていたものの、「現品はまだ出版されていないが、出版社と全く連絡が取れなくなってしまった」との返事を受け取ったという。同書店では「現時点で情報自体が入ってこなくなった。このまま情報収集は続けるが、出版されないかもしれない」とコメントしている。
香港の出版関係者は「すでに本は印刷され、売り出すばかりになっていたが、中国当局から圧力がかかった。出版すれば、中国内の博訊の関係者が逮捕されることも考えられるだけに、いまだにお蔵入りの状態だ」と明かしている。
『習近平の正体』の著書もあるジャーナリストの相馬勝氏は「中国では最高指導者のプライベートな情報はまったく公表されていないだけに、同書の内容が習氏の女性関係に焦点を当てていることで当局の逆鱗に触れたのだろう。また、習近平体制に入って、中国では幹部の女性問題や腐敗問題が暴かれて失脚するケースが増えているなかで、過去のこととはいえ、最高指導者である習近平国家主席の女性関係を暴露する本は発売禁止になるのは目に見えており、中国本土から多数の中国人が訪れる香港での発行は避けたかったのではないか」と指摘する。