今夏、朝日新聞の人事に衝撃が走った。現社長・木村伊量氏の右腕とされる元アメリカ総局長の西村陽一氏がネット部門のトップに立つことが発表されたのだ。ネット部門を立て直せ。木村社長は、将来の社長候補にそう厳命したのだ。
背景には歯止めのかからない購読者減がある。
「現在、朝日新聞の公称部数は760万部。幹部は口では部数維持を叫んでいるが、いずれ来る500万部時代を想定して実はすでに地方支局縮小に向かって動いている。それでもやっていけるコスト構造を作ろうと必死だ」(朝日新聞関係者)
『出版・新聞 絶望未来』の著者でジャーナリストの山田順氏が言葉を繋ぐ。
「朝日は一昨年くらいから、販売店に『数百万円の手当てを支払うから販売店をやめないか』と声をかけ、転業をすすめていた。現にこの5年間に都内だけで販売店が約100店舗も減ったと聞いています」
激変するビジネスモデルの救世主として2年前に導入したのが、電子新聞だった。だが、低空飛行が続く。
「表向き“10万突破”といっているが、単独で電子版を購読する読者は、そのうち1割にも満たない。あとは『定期購読料+1000円』のW購読で、それすら今年7月まで展開していた『初月無料+500円×5か月』の販促キャンペーン価格によるものが多い」(同)
朝日は今年5月、アメリカのネット大手AOL傘下のハフィントン・ポスト・メディアグループと合弁会社をつくり、ハフィントン・ポスト日本版を開始。ニュースやブログをベースに、ユーザーが意見を交換する参加型コミュニティーという触れ込みだったが、期待を大きく裏切った。
「なかなかページビュー(PV)が上がらず早くも“ハフィントン・ポストへの出資は大失敗”という声が上がっている」(同)
朝日は紙にかわる新たなプラットフォーム作りを模索するがいずれも失敗している。
※週刊ポスト2013年8月30日号